事故物件サイト「大島てる」が明かす運営のウラ側 日本の不動産業界に与えた大きなインパクト

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夏原:いや、影響力はありますよ。実際に現場で働く人は誤った情報をもとに「家賃を下げろ」とか「売買代金を返せ」とか言われて困っている。あるいは、ずっと更地だった場所が、なぜか事故物件として公開されていて買い手が付かないということもある。そもそも、事故物件の情報は取引の当事者間で開示するものだから、第三者に公表しなくていいでしょう、という声もありますよ。

事故物件は隠蔽されてきた

大島てる(おおしま・てる)/事故物件公示サイト「大島てる」管理人。同サイトを2005年に開設。殺人、自殺、火災死、孤独死などがあった物件を“事故物件”として、日本全国のみならず海外までを扱い、WEB上で公示する。「大島てる」は英語版も存在する

大島てる:私は当事者だけでなく、もっと広く伝えるべき情報だと思っています。隣室、近所でも事故物件は嫌だという人もいますから。

夏原:もちろん、私も「大島てる」の存在意義を否定しているわけではないです。不動産の歴史を振り返れば、事故物件は隠蔽されてきたし、間に一人住まわせれば告知義務はなくなるとか業界側が有利に解釈して運用してきた。それが「大島てる」ができて、SNSもあるので隠しにくい環境になってきた。ただ、「大島てる」にも改善が必要だ、という批判には耳を傾けるべきだと思っています。

小野:削除依頼や抗議はどのくらいの頻度でありますか?

大島てる:「ふざけるな!」みたいなものも含めると、ネット上では1日に10件くらい。書面は2日に1通くらいでしょうか。

夏原:もっと過激な抗議、例えばサイト閉鎖を求めて、訴えられたりしたことはないのですか?

大島てる:表立って運営体制に抗議されたことはありません。不動産業界のなかには遠巻きに批判する人は多いですが、なぜか、面と向かって訴えてくる人はいないんです。

夏原:そういう言い方をすると、「どんどん訴えてこい」と挑発していると、取られかねないですよ(笑)。

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