大幅な減産嫌気されトヨタ株が5日連続の下落 東南アジアのコロナ感染拡大で部品供給が不足
トヨタ自動車株が20日、5日続落となった。前日に部品の供給不足による大幅な減産を公表したことが嫌気された。日系の自動車メーカーが高いシェアを持つ東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大が影響するもので、国内競合やトヨタ系列の部品メーカーなどにも幅広く売りが広がった。
トヨタ株はこの日、前日比0.7%安で取引を開始。その後は上昇に転じる場面もあったが次第に売りが優勢となった。午後に入って下げ幅がさらに拡大し、一時前日比4.6%安の8864円まで下落して5月26日以来の日中安値となった。終値は8915円。
東南アジアの自動車市場は日系メーカーが8割超の高いシェアを持っており、日産自動車が約3カ月ぶりの日中下落率となるなど国内競合の株価も軒並み下落。また一部のトヨタ系自動車部品メーカーの株価も下げた。
影響は株価指数にも及び、20日の取引で267円下げた日経平均株価の下落寄与度を見ると、上位10社の中にデンソーやトヨタ、ホンダなど自動車関連の5銘柄が入り、デンソー1社で日経平均を23.4円、トヨタは13.7円押し下げた。
トヨタは18日、東南アジアでの新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品供給不足の影響で9月の世界生産が当初計画から4割程度減少する見通しを明らかにした。子会社のダイハツ工業も19日、23日から9月にかけて国内4工場の操業を断続的に停止すると発表した。
トヨタの熊倉和生調達本部長によると、東南アジアの感染拡大やロックダウンで仕入先の稼働に大きく影響している。特にマレーシアとベトナムで影響が大きいという。9月は全世界で36万台の減産となる。930万台としている今期(2022年3月期)の生産見通しに関しては変更しないという。
ブルームバーグのデータによると、マレーシアとインドネシア、タイでは1日の新規のコロナ感染者数は2万人を超えており、国によっては当局による厳しい操業規制が導入されている。
減産継続を警戒
東海東京調査センターの杉浦誠司アナリストは、トヨタの減産が明らかになる前の時点では今期の世界生産について940万台と予想しており、市場では1000万台ぐらいまで伸びるとの見方もあったという。
8月分も含めた減産幅は50万台に達する計算で、規模の点でも「ショック」だとし、「今のところ10月も続くのではないかという懸念がある状況」だと述べた。
デンソーの松井靖CFO(最高財務責任者)は20日、愛知県刈谷市の本社でのインタビューでトヨタの減産影響について一時的な減益要因となるものの、トヨタが年度内に挽回生産を予定していることから、今期(2022年3月期)の自社の利益に影響は出ないとの見通しを示した。
松井氏はトヨタの減産は9月のデンソーの売上高に最大で1000億円程度の下振れ要因となり、200億円から300億円程度の減益要因になる可能性があるものの、通期の利益計画の範囲内だとした。その上で「トヨタは挽回すると言ったら本当に挽回するメーカー」だとし、トヨタ以外の顧客も含めた挽回生産の水準や為替次第では通期の営業利益見通しを上方修正できる可能性もあると述べた。
楽観シナリオも
トヨタの熊倉氏は、部品不足の解消時期については正確に見通すことが難しく、コメントできないとした。今回の減産規模は通期生産計画のリスクとして織り込んでおり、今後挽回生産できれば上振れの余地があるとした上で、生産の「計画自体がギリギリのところで立てている」ため、「たくさんは挽回できないかなと思っている」と述べた。
SMBC日興証券の木下壽英アナリストは19日付のリポートで、市場コンセンサスではトヨタの減産リスクは他社と比較すると相対的にかなり低かったとし、その観点からは今回の減産は「一定程度ネガティブ」と捉えられると指摘した。一方、通期計画が下方修正されなかったことで「過度なネガティブ視は不要と考える」とも述べた。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一アナリストは19日付のリポートで、会社側の発表内容は同証が想定する2通りのシナリオのうちでは楽観シナリオに近いと指摘。その場合、10月に生産が正常化すると仮定すると、メーカー在庫の取り崩しや下期の挽回生産などで、今期期出荷台数への影響は12万台と限定的にとどまるとの見方を示した。
(ダイハツの国内工場の休業計画などを追加して更新します。)
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著者:堀江政嗣、武藤珠代
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