東京電力が見せた"再値上げ回避"への覚悟 原発なし、給与引き上げでも第1四半期は経常黒字に

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他方、「総人件費を増やすことは難しい」(同)ことから、50歳以上の社員を対象に希望退職募集も実施。当初の募集枠を超える1151人が6月末に退社した。希望退職に伴う年間の人件費削減額は約110億円と東電は見込んでいる(退職金の特別加算金のための費用は、2013年度に営業外費用として約70億円計上済み)。

第1四半期で525億円の経常利益を記録したとはいえ、先行きの見通しは難しい。会社側も「未定」として業績予想を発表していない。一般的には、電力会社は下期に修繕費などの費用がかさみ、上期に比べて業績は悪化する。

再値上げで「迷惑はかけたくない」

今後の業績を左右する焦点は、柏崎刈羽原発の再稼働と電気料金再値上げの行方だ。東電は昨年9月27日に柏崎刈羽原発6、7号機の新規制基準適合性審査を原子力規制委員会へ申請。だが、原発敷地内の地質調査などが長引き、審査はなかなか進まない。また、地元・新潟県の泉田裕彦知事が「福島事故の総括が先決」と強く反対しているため、再稼働のメドはまったく立っていない。

柏崎刈羽原発は再稼働のメドがまったく立っていない(撮影:尾形文繁)

新総特では、柏崎刈羽原発の再稼働時期について、7号機が2014年7月、6号機が同8月、1号機が15年1月、5号機が同2月と仮定している。そのうえで2014年度(単体)の営業益2507億円、経常益1677億円を計画している。

しかし、今期中の再稼働はほぼ100%不可能。来期中の再稼働すらも見込みにくい状況だ。前提条件が崩れた中では利益計画の達成も危うい。

そこで浮上するのが、電気料金の再値上げ(本格的な料金改定)の可能性だ。とはいえ、もともと原発再稼働の前提条件が“画餅”であることは東電自身も承知のうえ。その条件が崩れたからといって、利益計画達成のため安易に再値上げするようでは確信犯とのそしりを免れない。

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