日本企業が知らない「アジャイル」変革成功の秘訣 完璧主義、ご意見番、自前主義の弊害を打破する
この取り組みでは当初のプロジェクト特命チームから進化した、15名体制の正式な準備室がロケット離陸のミッションを担った。その成功には「真の顧客主義の原則の徹底追求」と「思い切った運営体制」が極めて重要であり、以下が特徴的であった。
2. 必要な機能をすべて兼ね備えた自己完結型の専任チームの組成
3. ブースター&能力補完としての社外人材の積極活用
4. 顧客の潜在欲求とバリアの徹底解明
5. ルール上「できない」ではなく「どうやったらできるか」の追求
日本企業が直面しがちな3つの障壁と成功への要諦
前例のないイノベーションや変革のロケットの打ち上げにはリスクが伴い、実験・失敗を何度も繰り返すことが必須である。また、ロケットに乗るアジャイルチームは決死の覚悟のOne-teamで、目の前で起こることに即座に対応・決断しながら操縦をする。しかしながら、日本の企業では、ここに立ちはだかる3つの障壁を打破する必要がある。
変革を成功させるうえで最も重要なのは、「早く失敗してそこから学ぶこと」だ。途中失敗することがあっても顧客価値を形にし、上手く行くまで何度も繰り返す。そのサイクルを高速で回す。しかし、日本の企業はなかなかこれができない。
決められたことをミスなく完璧にこなすというのが、ジャパンクオリティーを支えてきた美徳ではあるが、それが行きすぎて、どんなことに対しても完璧主義を意識的・無意識的に求めてしまう傾向がある。
結果、社員は失敗を恐れ、チャレンジができなくなる。だからこそ、変化・チャレンジのみに専心できるチームを切り出し、人事評価も含め委縮しない環境を提供することが欠かせない。
ロケットへの乗組員は少人数に限られるはずだが、いつの間にか日本の企業ではミドルマネジメントや既存オペレーションの組織からのご意見番が首を突っ込み、「乗り合い船」になってしまうことがよく見られる。
当然ながら、大きくて重たく遅い船は安定した航海ならともかく、離陸ミッションには不適当だ。
本気でロケットを離陸させようとするならば、必要十分な機能、経営資源、権限をチームに与え、ロケットを地上に縛り付ける鎖から解き放さなければならない。また、いわば「ミドル・アウト」を徹底し、ロケットが「いつもの乗り物」にならないように、括り出したうえでそのラインを守り続けなければならない。
ロケットミッションには前例のない試みや尖りが求められ、それには既存の発想やノウハウを超えたアプローチが不可欠だ。しかしながら、「頑張ってなんとかします」「欲しがりません」「社内でやれるはず」といった決死の自前主義がブレイクスルーを阻むことが見られる。
離陸において必要な人やノウハウをすべて社内で揃える必要はない。新しいことをするのに、求められる能力やケイパビリティが社内にないことは普通だ。目的を達するために使えるものは何でも使うくらいの柔軟性やハングリーさも必要だ。そのうえで、そのノウハウを自社に学習・還元することがベストと言えよう。
AXの第1ステージで、ロケットが離陸できてもすべてが成功するわけではない。中には途中で推進力を失って減速、あるいは墜落してしまうものもある。
後編では、変革を大気圏から脱出させ、組織全体の競争力を高める軌道に乗せるためにはどうすればよいかについて論じよう。
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