デルタ株の感染拡大でアジア経済に警戒シグナル いまエコノミストが注目する指標をチェック

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新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染急拡大で消費者の外出自粛や旅客機の運航停止が続く中、アジア経済に打撃が及んでいる兆しはすでに表れている。

人の移動状況を示すグーグルのモビリティーデータからは、政府の制限措置が移動に与える影響について初期の警戒シグナルが読み取れる。中国の航空会社が提供する座席数は旅行の低迷を示しており、東南アジアの製造業活動は縮小。オーストラリアの企業景況感は落ち込んでいる。

ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストはアジアにおけるデルタ株の悪影響に警鐘を鳴らし、JPモルガン・チェースなどと共に、中国の成長見通しを引き下げた。HSBCホールディングスはアジアの電子機器のサイクルが既にピークに達しているとの見方を示し、テクノロジー輸出が冷え込みつつある可能性を示唆した。

北京首都国際空港(5日) 

最近の動向を見極める上で、エコノミストが注目しているアジアの指標は以下の通り。

グーグルのモビリティーデータ

社会的流動性の制限は消費者への影響が最も大きく、特にサービス関連支出を損ねそうだ。豪州の2大都市はロックダウン(都市封鎖)下にあり、中国は夏休みの真っただ中で規制を導入。エコノミストは、小売りや業務への影響を読み取るためグーグルのデータに注目している。

  

ワクチン接種率

域内のワクチン接種率はばらつきが大きく、一部の人々は感染リスクにさらされたままだ。米ジョンズ・ホプキンズ大学がまとめたデータに基づくブルームバーグの試算によると、東南アジアのコロナ関連死亡率は今月に入り中南米を超え、世界最悪となった。アジアのワクチン接種進展ペースは世界でも目立って遅く、接種率は人口の14%にとどまる。これを下回るのは北アフリカとサハラ以南のアフリカだけだ。

ワクチン接種率で域内をリードしてるのはシンガポールと中国で、いずれも人口の60%強が必要量を投与済みだ。

  

中国の旅客輸送能力

中国の航空会社が提供する座席数は1週間で32%減り、コロナ禍初期以来の大幅減となった。新たな移動制限の影響がうかがえる。航空情報会社OAGのデータが示した。中国の落ち込みに加え、欧州や北米でも旅行の回復が滞っており、世界では週間ベースで6.5%減少した。

  

電子機器輸出

世界貿易を占う指標として、韓国の輸出に勝るものはほとんどない。世界的なテクノロジーブームを追い風に、コロナ禍が始まってから半導体や充電式電池といった韓国の輸出は急増した。半導体の需要はなお旺盛だが、HSBCのエコノミストは「電子機器のピーク」は過ぎた可能性があるとみている。

  

製造業PMI

コロナ危機が始まって以来、在宅勤務向けテクノロジーや医療機器などへの世界的な需要の高まりで、アジアの輸出は活況を呈している。ただ、北アジアの製造業は好調を維持する一方、東南アジアでは活動が縮小。インドネシアのIHSマークイット製造業購買担当者指数(PMI)は7月に40.1と、前月の53.5から急低下し、1年1カ月ぶりの低水準となった。

  

インフレ率

インフレは今のところアジアの回復に対する深刻な脅威にはなっていないが、早期の警戒シグナルは表れている。商品高を背景に、中国の生産者物価指数(PPI)は7月に前年同月比9%上昇。今後数カ月で伸びは落ち着くとみられているが、中国の生産者物価上昇がアジア圏や世界に波及する可能性が懸念される。

  

今後の焦点

ブルームバーグ・エコノミクスのシニアグローバルエコノミスト、ビョルン・ファンロイエ氏はリポートで、「既存のデータに基づく前向きな見通しにもかかわらず、不確実性は依然として高く、ダウンサイドのリスクがある」と指摘。「デルタ株の広がりは既に中国の成長見通し引き下げにつながっており、他の国でも同じことが起きる可能性がある」と予想した。

原題:Real-Time Data Suggest Asia’s Economy Already Feeling Delta Hit(抜粋)

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著者:Enda Curran、Jinshan Hong

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