オートバックスが「町の整備工場」を囲い込む理由 日本各地で次々と小規模事業者を買収する狙い

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オートバックスはどう車検需要を取り込むのか。まず1つが冒頭のような買収戦略だ。オートバックスの整備機能は元々、販売したカー用品の取り付けを主な目的としてきた。車検事業を強化するうえでは、高度の整備や車体の大きな破損を修理する板金加工などへの対応が必要だ。そのため、整備工場を子会社化するなどして、ノウハウの獲得を図っている。

2020年末には約500の自動車整備事業者などが加盟する協同組合、BSサミットと業務提携を結んだ。スーパーオートバックスなど大型店舗がある地域では対応可能な整備でも、小型店だけでは対応が難しい場合もある。こうした場合に相互送客などでカバーし合うのが目的だ。

整備士不足をどう解消するか

そして、もう1つオートバックスが力を入れるのが、メンテナンスパックの外販だ。メンテナンスパックでは車検や整備を一括で提供するのがウリで、通常は一般客向けに販売する。そのメンテナンスパックをリース会社や中古車販売店向けに販売を始めたのだ。

オートバックスの各店舗では、2021年10月から高度な電子制御などを持つ車両の整備に必要になる指定工場の認定取得を進めている(写真:オートバックスセブン)

倉林常務執行役員は「中古車販売業者では整備機能がない会社もある。そうした会社にとってはメンテナンスパックがあれば販売がしやすくなる」と語る。約600店を展開するオートバックスであれば、全国どこでも整備に対応可能なのも強みになる。

こうして認知を拡大しながら安定的な車検や整備の需要が確保できれば、安定的な収益源となるうえ、さらなる成長も期待できる。

とはいえ、課題もある。2014年に日本自動車整備振興会連合会が行ったアンケート調査によると、その当時すでに約半数の整備事業場が整備士不足の状況にあると回答している。さらに約10%が業務に支障がでるレベルであると答えている。

その後、自動車の保有台数は横ばいで推移している。2020年の整備士の数は2014年と比較して微減の状況が続いていて、依然として整備士不足は業界にとっての深刻な課題となっている。

その背景には低賃金や、顧客との接点が少なくやりがいや意義を感じにくいなどの問題が指摘されている。オートバックスが車検事業を成長させるうえでは、待遇の向上などを通じた整備士の確保がカギとなりそうだ。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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