「お金で時間を買う」発想が社員を幸せにする理由 「タイム・リッチ、環境リッチ」が生産性を上げる

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「働く場所を選べる」ことで生産性が上がる。効率性一辺倒ではない異色の時間術を紹介します(写真:kohei_hara/iStock)
ハーバード・ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーにして、心理学者のアシュリー・ウィランズが書いた『TIME SMART(タイム・スマート)』。効率性一辺倒ではない、異色の時間術の本だ。「お金より時間が大事」「生産性向上はタイム・リッチ(時間的に裕福な状態)から」「まず、健康で幸福な生活を送る、その後、生産性・創造性が上がる」と説く。もちろん、心理学者だから、科学的な調査、統計データでその主張を裏付ける。
累計導入社数1万社以上の人材紹介会社と求人企業をつなぐ採用プラットフォームや、ITエンジニアのキャリア支援サービスを提供している成長企業グルーヴスの代表、池見幸浩氏が同書を読み解く。

「働く場所を選べる」と、生産性は上がる

ひと言で言うなら、僕は『タイム・スマート』で書かれている内容に非常に共感するし、また著者のアシュリー・ウィランズ氏ととても近い感覚を持っています。お金よりも時間を大切にする、それがひいては幸せで豊かな生活をもたらすという考え方。この考え方を本書はさまざまなデータをもとにして明らかにしています。

『TIME SMART(タイム・スマート)』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

日本でも、お金を取るか時間を取るかというような議論は昔からありました。たとえば、歩かずにタクシーを利用するなどがあると思いますが、最終選択は自分が何に投資すべきか、何を重視するかによってくるでしょう。お金で時間を買うという発想を持つ経営者は多いと思います。だから僕自身、著者の時間に対する考え方をすんなり受け入れることができましたし、経営者のみならず、企業で働く人に対して「時間を賢く使えるようになろう」つまり「タイム・スマートになろう」と提唱することには大いに賛同します。

特に印象的だったのは、働く場所について提言しているくだりです。「どこでも好きな場所で仕事をしてもいい従業者は、オフィスの近くに住むことを求められる従業者より、生産性が4.4%高い」という調査結果が紹介されていますよね。実際、グルーヴスでも働きやすい環境を整えたことで驚くほど優秀な人が来てくれるようになりました。リモートワークができるかどうかで会社を選ぶ人も増えたのだと感じています。働く場所と生産性の関係性は、経営者として実感をもって読みました。

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