エプソン、好業績を引っ張る意外なプリンタ 競合が尻込みする市場で"うまみ"を独占

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貢献が大きいのは販売数量の面だけではない。通常、インクジェットプリンタは本体価格をできる限り低く抑えることで稼働台数を増やし、好採算の交換式インクカートリッジで儲けるというビジネスモデルになっている。だが、新興国では、非純正インクの使用比率が高く、利益源であるはずの純正カートリッジが思うように売れない。ところが、備え付けの大容量タンクでは純正品を使わざるを得ないため、稼働台数に比例して、インクの売り上げも増えていく。

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純正品を使う必要があるため、売り上げは稼働台数に比例して増えていく

なおかつ、セイコーエプソンにとって大容量タンクモデルが“おいしい”のは、米ヒューレット・パッカードやキヤノン、ブラザー工業といったライバルが展開しておらず、大容量タンク市場をほぼ独占できている点だ。

新興国において、競合他社は大きな需要が見込める低価格のレーザープリンタを中心に事業展開している。ここに大容量タンクモデルを投入すれば、主力品である低価格レーザーと食い合いになってしまう。新興国における大容量タンクモデルの積極的な展開は、インクジェットに特化しているセイコーエプソンだからこそできた戦略なのだ。

わが世の春はいつまで続く?

インドネシアでの製品発表の様子

大容量タンクモデルが牽引した好業績を受けて、セイコーエプソンは2014年度の通期予想を上方修正。売上高は従来予想比300億円(3.0%)増の1兆0400億円、営業利益は同160億円(15.4%)増の1200億円へと、それぞれ引き上げた。

利益の伸び率が第1四半期よりも鈍化しているのは、下半期に販促関連の費用を当初計画から積み増すため。インクジェットを中心とした情報関連機器は、この先も当面、好調が続くという想定だ。

ただし、かつての先進国がそうであったように、新興国でも経済が発展するにつれ、インクジェットからレーザーへと早晩、ユーザーの志向が移っていく可能性もある。現状に甘んじているだけでは、セイコーエプソンの“わが世の春”も短いもので終わってしまいかねない。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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