「関西の私大」が学生増で存在感を増している事情 背景には大学の「危機感の高まり」があった

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大学の”規模”によって、今後受ける影響が大きく変わるという事実はここまでに確認できました。それでは”地域”についてはどうなのでしょうか。そこで関西圏と東京圏を代表する9大学をそれぞれピックアップし、その学生数の増減を比較してみたいと思います。

下図に整理しましたが、個別に見れば、関東(東京)の各大学に比べて、関西圏9大学のほうが12年間での学生数伸び率が、かなり高いことがわかります。

2桁の伸びを示している個所に楕円の印を付けました。関西が3校、関東が2校ですが、全体的に見ても、数字上では関西が勝っていると言えそうです。

さらに次の図はグループ別に沿って整理したものですが、こちらを見れば、関関同立は9.6%増、対して関東圏を代表するMARCH5校では2.5%増であり、伸び率も関西の4分の1強に留まっています。ちなみに5.1%増である産近甲龍を加えた関西上位8私大で見れば、7.8%の増となります。

全国私大合計では4.0%増ですが、関西8私大を除いた全国合計を出せば3.6%増となり、伸び率は、関関同立の3分の1強、関西8私大の半分以下ということになります。

2つの図を見る限り、関西地域の私大のほうが、学生数を増やすことに成功していると思われます。なお、この背景には「関西圏特有の危機感」があったというのが筆者の考えですが、ではなぜ関西私大で危機感が高まったのでしょうか。

関西私大の危機感とは?

全国大学の入学定員の合計が、すべての大学進学希望者の合計を超えれば、計算上では誰でもどこかの大学に入学できる。この状態を「大学全入」と呼びます。

18歳人口と進学希望者の減少トレンドから、当初は2007年がそのスタートと予測されたそうですが、実際に数字上「大学全入」になったのは2009年度だったと考えられています。関西の大学業界では、2000年代前半からその対策がかなり真剣に議論されていました。

その理由はそれまでの時点であらゆる業界で”東京一極集中”がかなり進行していたからです。そして2000年代に入ると、実際にその偏りが関西圏の大学へ影響を及ぼし始めていました。

そのため当時から、大学経営コンサルタントによる大学経営診断などにおいて「首都圏への流出人数予測」といった話題が、学内のセミナーや勉強会などいろいろな機会で報告されていたようです。

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