新内閣は、早急に信認に足る財政再建策と成長戦略を示せ
現状の国債による財政赤字のファイナンスでは「社会保障の受益者である生まれの早い世代に、後の世代から所得再分配を行っている状態であり、その額は非常に大きい」(岩本教授)という後代へのツケ回し問題も重要だ。
受益世代は国債を保有している貯蓄世代でもある。相続されるからいいともいえない。される人もされない人もいる。この状態が続けば、突然の国債のデフォルトによる調整というハードランディングもありうる。
ごまかしのない王道の議論を
菅直人氏は新規国債発行を44・3兆円に抑えると、財政再建に意欲を示し、消費税増税の議論を開始した。しかし、一方で、「増税しても使い方を間違えなければ成長する」と、「増税成長論」なる妙な理屈も唱え始めた。
その心は、介護や医療など社会保障をしっかり提供すれば、そうした産業が成長し、安心した消費者の消費も増えるから、という。ある機関投資家は「新たなブードゥーエコノミクス(呪術経済学)の登場だ」と苦笑する。
介護や医療への公的支出は利権の巣窟となりやすい。日本は米国並みに国民負担率が低いというが、安易に社会保障費の拡大を前提としてしまうことは危険である。社会保障への支出が、資本ストックや労働人口の伸び率を高めるのか、あるいは生産性を上昇させるのか。実証もない疑わしい約束には、国民は普天間問題で懲りている。
少子高齢化が進展するなかで、財政をこれ以上悪化させられないから、増税で財源を確保せざるをえないわけで、順番が倒錯している。選挙を意識した耳当たりのいいごまかしとしか受けとれない。増税それ自体は痛みが避けられない。