欧州大水害、国際鉄道網に与えた被害の深刻度 ドイツで600kmが被災、気候変動のリスク顕在化
こうした天災に対し、鉄道インフラは脆弱だと指摘する声もある。道路の場合、多くの区間で高速道路以外に一般国道など多くの代替ルートがあることから、仮に片方が寸断されても一方は無事というケースもあり、実際にドイツでは鉄道が寸断された一部の地域で高速道路が先行して再開している。
鉄道の場合、今回のような水害による路盤流出や軌道破壊が発生した場合、復旧には道路以上の高度な工事が要求されることから、どうしても復旧に時間がかかってしまう。また、基本的には路面を整えれば最低限の通行が可能な道路と異なり、鉄道の運行再開には信号や分岐器、駅など付帯設備の復旧が必要不可欠で、これらの再整備にも多くの時間と工費が必要になる。
まだ詳しい被害状況は分かっていないが、ドイツ国内だけで600kmにも及ぶ不通区間の多くは、かなり深刻なダメージを負っており、復旧には相当な時間を要する可能性がある。
気候変動抑制に寄与する鉄道だが…
ドイツ鉄道は、とりあえず主要幹線と被害が少なかった路線から優先的に復旧し、被害の大きかった路線は調査のうえ、今後の復旧スケジュールを決めていくとの考えを示している。同社は年内に被災したインフラのうち8割の復旧を目指すとしている。
また、同様に被害が深刻だったベルギーは、前述の通りブリュッセル―ケルン間の一部区間が少なくとも8月末まで再開できる見込みはないと言われており、当面の間旅客列車は運休、貨物列車は迂回させるといった対策を必要とするだろう。
まずは両国とも最低限の復旧作業を進め、とりわけ都市間の幹線は単線でも運行再開させることが望まれる。
これ以上の気候変動を抑制するために、これまでヨーロッパでは乗客1人当たり/荷物重量当たりに対する二酸化炭素排出量が、他の交通機関と比較して少ない鉄道の利用を促してきたが、その気候変動によって災害が発生し、鉄道を破壊するというのだから、何とも皮肉な話である。
日本における台風災害にも言えるが、近年の気候変動は世界各地で我々の想像をはるかに超えるレベルで進み、過去に経験したことがないほどの集中豪雨や、それを起因とした河川の氾濫が起きやすくなっているようだ。都市やインフラの整備計画は、今後こうした突発的な気象条件に耐えられるよう、再設計を必要とする時期に来ていると言えよう。
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