非正規雇用が「日本の生産性」低迷させる根本理由 「最低賃金の引き上げ」なくして経済の復活なし
イタリアと同様に、日本も生産性が上がりましたが、労働生産性の低迷は極めて顕著です。労働生産性が上がっていないのに、生産性が上がっているのは、その間に労働参加率が上がったことを意味しています。
また、日本企業の設備投資も先進国各国に比べて非常に低迷しています。「資本深化の後退」が進んでいると考えるのが妥当だと思います。例えば、アメリカは1990年以降、1人当たり設備投資が2.6倍増えていますが、日本は17.1%も減っています。
日本がイタリアと同じ轍を踏んだ理由
なぜ、日本でイタリアと同じような悪影響が出たのでしょうか。
非正規雇用を増やして賃金の規制も緩和することによって、イタリアではモノプソニーの力が強くなりました。モノプソニーとは経営者の力が労働者に対して強くなることを意味しています。結果として、労働分配率が下がって、実質賃金の低下につながります。わかりやすく言えば、「企業による労働者の搾取」の度合が強くなっていることを意味します(参照:日本人の「給料安すぎ問題」はこの理論で解ける)。
モノプソニーを制限するには、最低賃金の引き上げが最も有効です。なぜかというと、モノプソニーは立場が弱い非正規雇用に影響が強く現れるからです。こういう人は大半が最低賃金で働いているので、最低賃金の引き上げが有効な政策手段とされます。
日本の最低賃金の水準は、諸外国の4分の3くらいしかありません。この水準では、モノプソニーを制限するには不十分です。その結果、労働市場の規制緩和を機に、経営者は人件費の削減に走りました。さらに外国人労働者を増やしたこともあり、実質賃金の低迷が諸外国より顕著になったのです。
このように考えていくと、「労働市場を緩和をするときには、最低賃金の引き上げもしっかり講じる必要がある」という結論になります。だからこそ、アメリカの各州は、コロナ禍であっても最低賃金を継続的に引き上げているのです。
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