時速6~15キロ「低速モビリティ」は普及するのか 「モビチェン」公認で考える移動手段の可能性
日本では道路交通法上、その多くは原動機付自転車の扱いになっているが、法規についての周知が徹底されていない印象がある。そのため歩道を通行したり、ヘルメット未着用で走行したりする人もいるのが実情だ。
しかし、立ち乗り式のセグウェイを使った公道実験や私有地内での各種ツアー、自動運転で食品や荷物などを搬送する配送ロボットの実証試験はすでに行われているし、これらより少し大きなEVとして、トヨタが2人乗りの超小型モビリティ「C+pod」を2020年12月から地方自治体向け等で発売を始めている。
このような、従来の自転車、自動2輪車、また自動4輪車とは違う、比較的低速で移動する新しい乗り物を、国は「多様な交通主体」と総称し、社会における今後の在り方について有識者会議等での議論を進めている。
その中に、前述の「車両区分を変化させることができるモビリティ」が含まれている。
時速6キロの電動車いすは俊敏でも遅く、怖い
議論の場のひとつである、警察庁「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」が2021年4月15日公表した中間報告概要を見ると、キーポイントとなっているのは、「最高速度」「運転免許」、そして「ヘルメット着用の有無」だ。
最高速度については、歩道通行車(時速6キロ程度)まで、小型低速車(時速15キロ未満)、既存の原動機付自転車等(時速15キロ以上)と、大きく3類型に分ける考え方が示されている。
「時速6キロ程度まで」とは、現状では電動車いすが該当するもので、道路交通法上は身体障害車の車いすとして歩行者扱いとなっている。
ちなみに筆者は、福井県永平寺町等での各種実証試験の一環として、ホンダ製の電動車いすを個人所有している。
実際に利用してみると、時速6キロという速度は、並走する人が早歩きする程度での速度で、室内や施設内の移動では“けっこう俊敏に動く”と思う反面、車道や歩道で数百メートルから数キロを走行すると、周囲の自動車や自転車との速度差が大きく“かなり遅く”感じる。
また、歩道がない車道では、歩行者と同様に右側の路側帯通行が義務化されているが、そうなると左側通行の自動車や自転車と対向することになり、道路形状や交通状況では“かなり危険”と感じる場面もある。
本来、電動車いすは、医療機器として医療施設などの敷地内移動などを目的としたものだったが、それが中山間地域、団地、新興住宅地で“高齢者向けの乗り物”として拡大した。またトヨタは、立ち乗り式も含めて最高時速6キロ程度で走行する製品「歩行領域EV」の量産化を目指して、実証試験を行っている。
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