京急がめぐらす、品川再開発の深謀遠慮 羽田―品川10分も夢じゃない?

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JRの新駅建設予定地

京急が恩恵を受けそうなのは、品川駅周辺だけではない。泉岳寺駅周辺でも、再開発の動きが活発化している。

JR東日本が発表した田町―品川間の新駅の位置は、京急の終着駅でもある泉岳寺駅の南東方向にあり、乗り換え駅としての役割を果たすことが期待されている。さらに、新駅周辺には多くのビルの建設が想定されている。品川インターシティ(7.5万人収容)をしのぐ、10万人規模のオフィスワーカーが同地で働くのではないかとの見方もある。

通過駅からターミナル駅に

仮に、10万人うち1割が泉岳寺駅を利用して京急線に乗るとしても、1日1万人分の輸送人員増加につながる。今まで羽田方面から都心に向かう際の通過駅に過ぎなかった京急の終点が、一気にターミナル駅に変貌する可能性を秘めている。実際、ガイドライン案では、都の交通局が管轄する泉岳寺駅の利用増に備えた機能強化の検討が謳われている。駅ホームやコンコースの拡幅・拡張などが想定されているという。

周辺での滞在需要増に備え、京急は泉岳寺駅に近接する場所に宿泊特化型ホテル「京急EXイン」を建設することを決めた。2016年夏のオープン予定で、JRの新駅が完成する2020年を前に、地盤固めを図る。

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泉岳寺駅の真上にある京急の本社ビル

また、泉岳寺駅の真上には京急の本社ビルがある。同社は今のところ再開発などの予定はないとしているが、新駅とも近い場所にあり、完成から30年以上が経過した本社ビルの土地を有効活用しない手はないだろう。

京急社内でも、再開発に向けた体制づくりが着々と進んでいる。昨年には「品川プロジェクト委員会」を設置。原田一之社長が就任と同時に立ち上げた肝いりの組織で、同委員会を中心にして開発を推進していくという。

「品川・高輪周辺にある6万平方メートルの土地を生かし、品川・羽田を玄関口とした沿線活性化を進めている。今回、ガイドラインの案が提示されたが、今後は関係者と協議を進めながら、沿線が活性化する方法を見いだしていきたい」(京急広報)

「品川・羽田を玄関口として、国内外の多くの人々が集う、豊かな沿線へ」――。京急が掲げる長期ビジョンのフレーズだ。完成時期などの明示はないものの、都が示した品川駅・田町駅周辺地区のまちづくりのガイドラインの方向性は、京急の長期ビジョンを実現させるための大きな追い風となることは間違いない。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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