日本に住む外国人憤慨させる「政府アプリ」の正体 日本人ならダウンロードできることへの恐怖感

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「あのポスターは人々にこう言っているのだ。『周りを見ろ!あの外人は不法滞在かもしれないぞ。調べてみないのか?!』と。こうしたメッセージがひどいイメージとなって表れているのだ。彼ら(入管)がこのポスターがどんな印象を与えるかについて誰にも相談しなかったのは明らかだ」

長期にわたって合法的に日本に居住している者として、私もエーデルスタインと同じ懸念を抱いている。外国人を雇用する経営者だけでなく、全国民によってますます監視を強める必要があるのだという誤解しようのないメッセージを、このポスターとアプリは暗示しているのだ。そうでなければ、なぜこの広告を公共の場に設置し、アプリを誰でもダウンロードできるようにするのだろうか。

日本に不法滞在する外国人はやむをえない事情がある場合もあるが、不法であることは確かだし、それに対して安全面の懸念を抱く人もいるだろう。それでも、合法的に滞在する外国人に犯罪者のレッテルを張ることを避けながらアプリを宣伝する方法を入管がしなかったことの言い訳にはならない。もしその気さえあれば、外国人に関する激しい恐怖と無知を掻き立てずにアプリの宣伝を行う方法がきっとあったはずだ。

アプリを公に宣伝するのではなく、さまざまなビジネス協会や商工会議所へと限定的に広告を配布し、経営者のみをターゲットとすることもできただろう。

どのように使われるのかに対する不安

私の2つ目の懸念もかなり明白なものだ。それはもちろん、外国人嫌悪の傾向がある人々によってこのアプリがどのように使われるかについての懸念だ。日本人がアプリを利用して外国人を監視したり、最悪悪用したりすることにはならないのだろうか。子どもが外国人やバイレイシャルの日本人の子をいじめるためにアプリを使ったりすることすらもあるのだろうか?このアプリは差別のための一種の”武器”として用いることができる。だからこそ誰の手にも渡ってはならないのだ。

「在留管理局はハラスメントのための道具を日本にいる外国人嫌いの人種差別主義者たちに渡しているのだ。ハラスメントのための言い訳としても使われるだろう」とエーデルスタインは話す。「外人嫌いの人々はこう振る舞うだろう。『あなたの在留カードを見せてもらってもいいですか?あなたが不法か合法か確認したいので』」。

多くの外国人もSNSで不安の声を上げている。

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