中国の企業や大学で、外国製の科学技術計算ソフトウェアを中国製に置き換える「国産代替」の動きが加速している。このことが、中国のソフト開発会社に発展の好機をもたらしている。
その典型事例と言えるのが杉数科技だ。同社は6月9日、当初の計画を上回る総額約2億元(約34億円)のシリーズCの資金調達を完了したと発表した。リード投資家を務めたのは、投資銀行大手の中銀国際とプライベート・エクイティー・ファンドの天任投資だ。調達した資金は、主に製品開発、販売促進、人材育成などに充てるという。
杉数科技は、アメリカのスタンフォード大学で博士号を取得した4人の創業メンバーが2016年に設立した。本社は北京にあり、主にソルバーと呼ばれる科学技術計算ソフトの研究開発を行っている。
ソルバーは、現実の課題を数学的にモデル化し、アルゴリズムに従って最適な解を算出するものだ。例えば宇宙船の最適な軌道の計算や、膨大な数の貨物を取り扱う港湾作業の効率化、物流企業の輸送経路の最適化などに応用されている。
中国で科学技術計算ソフトの国産代替が進む背景には、2つの事件がある。2019年5月、アメリカ商務省は通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)をエンティティー・リストに指定した(訳注:アメリカの安全保障や外交政策上の利益に反すると判断された企業等のリスト)。その後、ファーウェイは(アメリカ製の)最新のEDA(回路自動設計)ソフトウェアを使った半導体の設計ができなくなってしまった。
海外依存の問題が浮き彫りに
さらに2020年5月、アメリカ商務省はハルビン工業大学などの研究機関をエンティティー・リストに加えた。その影響により、大学の研究者や学生は(アメリカのマスワークス社が開発した)MATLABなど、世界中で広く使われている数値解析ソフトウェアを使用できなくなった。
この2つの事件は中国の企業や研究機関を震撼させ、科学技術計算ソフトの海外依存の問題を浮かび上がらせた。ソルバーについても世界の大手3社はいずれもアメリカ企業であり、合計で90%以上の市場シェアを握っている。中国でも過去数十年にわたって、ソルバーの市場を海外企業が独占してきたのだ。
2019年まで、杉数科技の顧客は主に外資企業や中国の民営企業だった。ところが米中関係が悪化するにつれて、ある時期を境に多くの国有企業から「アメリカ製のソフトから(杉数科技のソフトに)置き換えたい」という問い合わせが殺到した。それを機に、杉数科技はすばやく戦略を転換し、中国国内の膨大な置き換え需要に照準を合わせたという。
(財新記者:張而馳)
※原文の配信は6月10日
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