少子化問題に決定的に欠けている「少母化」視点 30年前も今も有配偶女性の約8割は子持ちだ

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日本に「少子化問題」というものは存在せず、あるのは「少母化問題」です。それについては、以前、『出生数90万人割れは「少母化」が最たる原因だ』の記事でも書き、その後、「少母化」という言葉は複数のテレビなどで取り上げていただきました。

少子化の本質的な原因は「少母化」

生まれてくる子どもの数が少ないという見方をしてしまうと、世の女性たちが子どもを産んでいないかのような誤解を与えがちです。過去、ある政治家が「女性は産む機械」的な失言をして問題になりましたが、それもこれも「少子化は、母親が子を産まなくなったから」という間違った認識によるものです。

母親が子どもを産んでいないから少子化なのではなく、その前提となる「母親となる女性の数が減少」しているという問題なのです。

日本は1980年代まで皆婚時代でした。皆婚時代とは、国勢調査が始まった1920年から1985年まで男女とも一貫して生涯未婚率が5%以下で推移していた時代を指します(参照:『100年前の日本人が「全員結婚」できた理由』)。

以下の表は、その皆婚時代の最後となる1985年とその30年後の2015年の15~39歳における女性の有配偶人口と1人以上出産した母親の数を比較したものです。

約1240万人いた有配偶女性人口は約650万人へと半減し、約1100万いた母親の数も約500万人と53%も減っています。子どもを産む母親の数が半減しているですから、出生数が減るのは当然です。

一方で、結婚した有配偶女性のうち子どもを産んで母親になる比率は、1985年も2015年もそれほど大きな違いはなく、結婚すれば少なくとも8割の女性は子どもを産んでいます。

参考として掲出している同年の出生数で比較してみても、母親の数が半減以上にもかかわらず、出生数自体は3割減にとどまっている。これは、2015年のお母さんも、1985年のお母さんと同じように出産しているという証拠です。

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