IBM、アップル2度目は「大人の関係」 企業へのモバイル機器販売で提携した事情

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

アップルは、iOSのAndroidに対する優位性として「セキュリティ」を売り物にしている。だが一方で、企業向けの管理ソリューションでは、Windowsの持つ実績やAndroidの持つ自由度の価値を評価する声もある。今秋提供予定の「iOS8」では、企業向けの管理機能やアプリ開発の自由度向上をアピールポイントにしているが、企業向け分野での販売量拡大には、さらなる決定打が必要、と判断されたのだろう。

iPhoneの登場から7年、iPadの登場から4年が経過し、個人への販売数量はピークを迎えた、との見方が根強い。アップルの利益源泉は「ハードの売り上げ」であり、今後も成長を維持するには、企業向けニーズの掘り起こしが不可欠だ。すなわち、今回の提携はアップル側からのラブコール、という部分が大きいのではないか……と予想できるわけだ。

具体策はそれほど多くない

逆にいえば、この施策における「具体的な策」は意外なほど少ない。IBMとアップルは共同で「IBM MobileFirst for iOSソリューション」を展開する、としているが、その内容は、「IBMがiOS機器をクライアントとして企業に提供する時のソリューション」そのものであり、新しい要素は少ない。むしろ今回の提携は、「IBMは今後iOS機器を積極的にサポートしていく」「iOSを使った企業ソリューションを求めている場合、IBMがファーストチョイスになり得る」というアナウンス効果が狙いである、と考えてもいい。

実は、アップルとIBMが提携するのは、これがはじめてではない。1991年、両社はOS開発について包括的な提携を行っていた。勢力を伸ばしつつあったWindowsに対抗し、「Taligent」と呼ばれる次世代OSを開発しよう、という試みだ。結局この計画は1996年に頓挫し、成果はIBMに吸収されていった。現在のアップル製品に、その面影はない。

アップルとIBMの「2度目の提携」の特徴は、1度目の提携と違い、「一緒になにかを作るわけではない」ところにある。現在、IBMとアップルはまったく競合しておらず、だからこそ組んでもマイナス点が生まれない。お互いの弱みをカバーしあうための、より「大人な提携」といえそうだ。

西田 宗千佳 フリージャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

にしだ むねちか / Munechika Nishida

得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、『アエラ』『週刊朝日』『週刊現代』『週刊東洋経済』『プレジデント』朝日新聞デジタル、AV WatchASCIIi.jpなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。著書に『ソニーとアップル』(朝日新聞出版)、『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)、『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』(アスキー新書)、『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組 』『電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(すべてエンターブレイン)、『リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ』(TAC出版)、『知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?』(共著、徳間書店)、『災害時 ケータイ&ネット活用BOOK 「つながらない!」とき、どうするか?』(共著、朝日新聞出版)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事