サンリオ32歳社長が社内風土を痛烈批判した理由 12期ぶり最終赤字、改革をどう乗り越えるのか

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「聖域となっていた」(辻社長)物販事業の改善も課題のひとつ。物販は創業者である辻信太郎会長が強いこだわりを持ち、前期の国内売上高326億円のうち131億円を占めるなど、存在感は大きい。

ただし、アイテム数が増えすぎたことで多くの在庫を抱え、ショップの採算悪化も問題だった。今後は赤字アイテムを削減し、全体の数を現在の5000から1900まで減らす。ユーザーのニーズや商品ごとの利益率など、データを考慮したマーケティングを進める方針だ。

また、前期に11.6億円の営業赤字となったアメリカも大幅なテコ入れの対象になる。直営店の閉鎖や卸の外部化、ECの効率化など、コスト削減策を講じる。そのほかの地域でも、EC事業拡大や各地、各分野でのパートナーとの連携、新規IPの創出など成長戦略も準備し、この3年を再成長に向けた足場固めの期間とする考えだ。

問われる改革の実行力

辻社長は外部人材の手を借りつつ、会社を変えていく考えなのだろう。信太郎会長の孫で創業家出身とはいえ、1988年生まれの32歳とまだ若く、社内にはサンリオを支えてきた先輩社員も多い。責任の明確化や数字と論理に基づく経営判断で、社員に納得して仕事に臨んでもらいたいという思いもあるようだ。

実は、4期連続の減収減益となった2018年、辻社長(当時専務)が中心となって策定した前回の中計もハローキティの市場規模が縮小している点などからマーケティングの再強化、新たなキャラクターの育成などを掲げていた。事業横断型のビジネス、さらには物販の再構築といった項目もある。つまり、経営課題は以前からほとんど変わっていないのだ。

説明会の最後、辻社長は「あとは実行するだけ。機動力、実行力を備えた新しいサンリオに期待していただきたい」と語った。まさに実行力こそが問われる局面になる。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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