火災保険「詐欺や不正請求」が多発しているなぜ 「家の修理」に活用したいと考えていませんか?

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当然、そうした会社、不審な請求は保険会社のほうでもチェックしている。2020年からは保険会社のみならず、金融庁も気にしているという声を複数聞くと斎藤氏は話す。

「2020年は台風が1つも日本に上陸しませんでした。それなのに台風被害の申請がじゃんじゃん来た。これはおかしいと調査してみたところ、劣化を台風被害として申請している例が多数あることが判明したのです」(斎藤氏)

冒頭で触れた通り、保険料は年々アップしている。その一方で、悪質な住宅修理業者などが関与した消費者トラブルが増えているのはどうかというのが金融庁の問題意識だろう。本当に保険金が必要な時に支払われない事態が起きたら多くの人が困窮することになる。

あの手この手で詐欺の防止に努めている

そこで、例えば損保ジャパンでは災害発生時、LINEや郵便で直接保険加入者に呼びかけを行い、事業者を介さずに請求を受けるようにしている。日常的にも保険金請求書類発送時や代理店を通じた注意喚起を行っている。

損保協会ではヤフー防災情報に注意喚起情報を掲載し、消費者庁・国民生活センターとの情報共有や、連携強化などを実施。2018年からは保険金請求歴、および不正請求防止に関する各社間の情報交換を全保険種目に拡大したほか、2020年には保険金不正請求疑義事案の自動検知機能を追加するなど、不正請求防止の態勢を強化している。

また、各都道府県には損害保険防犯対策協議会を設置し、不正請求防止に向けて損害保険会社のみならず、共済組合などとも情報共有を行っているという。もし、架空請求、水増し請求などの不正請求が発覚した場合には、保険金の返還はもちろん、契約の解除、保険会社に対する詐欺罪、詐欺未遂などでの刑事告訴もありうる。

本来、保険は有効利用するものでなく、相互扶助の仕組みである。出来心のお小遣い稼ぎのつもりでほかの保険加入者のお金を詐取する犯罪者にならないよう、甘い誘いには乗らないことである。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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