火災保険「詐欺や不正請求」が多発しているなぜ 「家の修理」に活用したいと考えていませんか?
日本損害保険協会(以下損保協会)が最初に「住宅の修理などに関するトラブルにご注意」と題する記事をホームページにアップしたのは2012年。言わずと知れた大震災の後だったことを考えると、以降の災害多発もこの手口を助長したと思われる。大災害後であれば、損保会社は忙しく、1つひとつの現場調査を精査する時間はなかっただろう。これは、不正請求をする人たちには好都合だった。
保険自由化時の情報発信不足に加え、損害保険業界にはそれ以外にも隙がある。1つは、2005年以降しばらく続いた保険金不払い問題だ。それまでは、被害を受けてから30日以内という期限を切っての事故を通知する義務があったのだが、それがなし崩し的に反故になり、今では「速やかに」という程度の文言になっている。
災害被害は30日を過ぎると劣化が進み、本来の被害の姿がわからなくなる。それを防ぐための30日以内の事故通知だったのだが、今では3年以内に請求の意思を伝えればいいということになっており、いつだかわからない被害の申し立てにつながっているのである。
「復旧義務」がないことも隙の1つに
また、そもそも、保険金受領後には復旧義務がない。損保ジャパンによると同社の場合、もともと火災保険における時価払い契約には復旧義務がなく、1964年からしばらくの間利得禁止のために復旧義務が課せられたことはあったものの、1975年には再び復旧義務が外され、今に至っているという。復旧が義務とされていた時期のほうが短かったのである。
「復旧義務を課すことで修理業者が手配できない」「修理期限のタイミングをはかるのが難しい」など、保険加入者に不利が生じるためだが、利用者の利便性を優先した善意の姿勢が悪意の事業者に利用されているのだ。
保険の専門家である代理店が過去に不正請求の片棒を担ぎ、数年前から大規模災害に関しては介入が難しくなったのも隙の1つ。保険代理店には評価制度があり、1年間の営業成績に加えて、「損害率」と言われる(支払保険金/収入保険料)の数値によるものも大きな評価要因となっている。
ところが、自然災害による保険金はこの評価に含まれない。いくら請求を出しても代理店のマイナスにならないのだ。そのため、代理店が施工業者と結託し、工事費を水増し請求する事案が多発したのである。
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