「格差は不当」と憤る人が気づいてない過酷な摂理 完全に自由な自由主義経済である限り不平等に
あなたは疑問を持つかもしれない。確かに、人から人へのお金の移動により、厳密には平等ではなくなるだろう。しかし、全員がお金を使ったり、もらったりすることを似たように行えば、おおよそは平等のままなのではないか、と。少なくとも格差と呼ばれるような極端な差は生じないのではないか、と。
ところが、実際にはそうはならない。これをコンピューターでシミュレーションすることができる(図(a)および(b))。
(外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
完全に平等な取引からも格差は生まれる
最初に、全員が同額のマネーを持っている状況にする。そこから、人と人との間で平等に等しい確率で取引が起きることを想定する。それぞれのマネーの移動は、一律同じ額で、ランダムに平等に行う。
大事なのは、これは現実にはありえないような極端に平等な条件だということである。各人がお金を使う確率(頻度)ももらう確率(頻度)も、全員が厳密に等しいとしたのである。一様にランダムな確率で割り当てたからだ。理想的な平等条件で取引を行うと、何が起きるかを見てみるというシミュレーションだ。
ところが、ここまで厳密に平等な条件を設定しても、富める人と貧しい人との大きなマネー配分の格差が生じるのである。再度強調するが、このマネーの移動は、完全にランダムで平等に行われた。最初の所持金も平等で、一切の能力差や親の裕福さのような個人差はない完全に平等な条件でも、この格差が生じてしまうのである。ここだけを見ても、格差は極めて簡単に生じることがわかると思う。
繰り返しランダムに人から人へとお金を移動させるのは、いわばトランプをシャッフルするような処理だ。トランプが、買った直後のように数字順に、スペード、ダイヤなどのマークごとに並べられた状態になることは、意識的に揃えないと決して実現できない。すなわちいろいろな可能性がある中ではごく珍しい状態である。一方、繰り返しシャッフルした状態、すなわちトランプがよく切れた状態は、より自然なばらつきのある状態になる。
お金の配分についても、人から人へ繰り返しランダムに移動させることで、開始時の意識的に一律に揃えた状態から、より自然でありふれた配分状態にすることができる。つまり、格差のある状態は何の理由もなく、ごくありふれた結果だということである。
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