静岡県知事選、「リニア」が争点にならない不思議

川勝氏の対抗馬、岩井氏も「私は推進派ではない」

82歳の二階幹事長、岩井氏の出馬に反対した派閥の長、74歳の竹下亘氏、72歳の菅義偉首相ら党の重鎮に県連は懇願したが、岩井氏推薦の動きは鈍かった。党内が世代交代の状況ではないのに、川勝氏に物申すことなどできるはずもない。

年齢は時代や個人によってまったく違う。テレビアニメ「サザエさん」の父親、波平は、定年1年前、54歳の設定である。ほぼ、岩井氏と同じ年齢だが、当時の波平は今ならば、70歳過ぎと言ってもおかしくない。

川勝氏は、県の健康寿命区分を挙げて、46~76歳を「壮年期」だと気力満々に語った。見た目だけでならば、実年齢より20歳近く若いと言ってもおかしくない。

いちばん問題なのは、リニアを争点から外す戦略に出てしまったことである。いくらリニア問題解決に地域住民の理解、協力が最優先と岩井氏が訴えても、県民は岩井、川勝の両氏がリニアに同じ姿勢で臨むなど夢にも思わないだろう。実のところ、岩井氏はリニア推進であり、川勝氏は反リニアであると誰もが承知している。

選挙戦略としてリニア外しが有効と自民県連が判断したのだろうが、単に、川勝氏に真っ向から論争できない弱腰と見られるのが落ちである。リニア外しは、選挙戦では逆効果になる可能性のほうが大きい。

静岡県へのリニアのメリットがわからない

川勝氏は5月14日の会見で、リニア着工に向けて、山梨県外へ流出する湧水をすべて戻すことを求めている。これに対して、国の有識者会議は、南アルプスのリニア難工事で「人命安全」を優先、工事期間中、山梨県外に流出したとしても、湧水全量を戻すことで、大井川下流域への影響はほぼないと結論づけている。知事のよく言う「1滴の水」で人命を危険にさらしていいはずがない。いずれにしても、リニア工事によって、大井川下流域への影響がないことを岩井氏はちゃんと説明すれば県民には理解できるだろう。

6月20日投票の静岡県知事選の候補者掲示板(筆者撮影)

川勝氏は、リニア推進を唱えた書籍「リニア中央新幹線で日本は変わる」(PHP研究所、2001年8月発行)を持ち出して、当時、静岡県の南アルプスを貫通する計画はなかったことを強調した。同書は、東海道新幹線が静岡県に与えた恩恵を参考に、リニアによって、山梨、長野、岐阜などの各県に多大な恩恵をもたらすことも予測している。逆に言えば、リニア工事によって、沿線他県には恩恵があるが、静岡県にはまったくないのだ。

JR東海はリニア工事推進のために、静岡県への地域貢献策を明らかにすべきだ。リニアを選挙戦の争点にできない本当の理由は、リニア工事による流域への影響問題ではなく、実は、静岡県へのメリットが見えないからである。

リニア工事による流域への影響がないことを理解したとしても、静岡県にはデメリットしか見えてこない。川勝氏が当選すれば、少なくとも今後4年間はリニア工事の着工は凍結されるはずだ。

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