静岡県知事選、「リニア」が争点にならない不思議 川勝氏の対抗馬、岩井氏も「私は推進派ではない」

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それだけではない。リニア静岡工事の差し止めを求める「大井川の水を守る62万人運動」の焼津、藤枝、吉田町など市町議らが5月13日、約2万人の署名を知事に提出した。知事はその要請に応えるよう国、JR東海に意見書を送った。そのほか、日本山岳会静岡支部など数多くの市民団体がリニア工事の中止などを求める意見書を知事に持参している。

「命の水」と「南アルプスの自然環境」保全を求めて、反リニアを訴える川勝氏へは、特に子供を持つ女性らの人気が高い。前回選は、自民は候補擁立を見送り、目立った争点もなかったが、川勝氏は約83万票を獲得した。今回選は100万票を超えることは間違いないだろう。

これに対して、自民県連は2017年衆院選8選挙区の自民候補者が獲得した合計得票85万3000票から、当選ラインを83万台とした。

たとえ、85万3000票に届いたとしても、川勝氏には勝てないだろう。

「細野票」の上積みが鍵を握る

自民県連会長だった上川陽子法相は二階俊博幹事長に岩井氏の推薦を要望、何度も党本部に足を運んだ。上川、二階両氏の会合の席で、二階派に入会した細野豪志代議士の自民入りについて話し合われたのかどうかについてまったく漏れ聞こえない。県連はこれまで、細野氏の自民入りに徹底的に反対してきた。このため、自民候補の合計得票85万3000票には、細野氏の得票数は含まれない。

自民党の岩井茂樹氏の事務所(筆者撮影)

元環境相でもある細野氏の人気ぶりは川勝氏に負けていない。2017年衆院選で獲得した約13万8000票は県内断トツであり、その人気ぶりは選挙区の静岡5区だけでなく、全県に及んでいる。岩井氏応援で細野氏が県内各地を回ることになれば、確実に票の上積みを図ることができる。細野票を上積みすることで、川勝氏といい勝負ができるかもしれない。

自民県連が細野氏を温かく迎え入れることができるかが勝負の分かれ目になるだろう。水面下の動きなのか、表面的にはまったく見えてこない。

また、自民県連は「世代交代」「多選阻止」などを選挙戦略に掲げている。

52歳の岩井氏は、世代交代を旗印にした。72歳の川勝氏に比べて、20歳も若いのだから、わかりやすい。情熱、体力の点などで若さを強調したいのだろう。ただ、年を取った人が退き、若い人にとって変わる世代交代を自民候補が唱えれば、自己矛盾になる。岩井氏が4月13日に出馬を明らかにしたあと、1カ月も公式な出馬表明が遅れたのは、党内の水面下での駆け引きがあったからだが、その事情を見れば、年齢のことなど口が裂けても言えないはずだ。

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