野村HD、3100億円の“大やけど"でも強気一辺倒 法人部門の業績目標をさらに引き上げ反転攻勢に

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1つのグループで投資銀行業務、アセットマネジメント、リテール営業を一貫して行う独自のビジネスモデルを貫き通すのは容易ではない。奥田CEOも2020年4月の就任直後から、「明日は今日の延長線上にない」「野村を次のステージへ」と繰り返している。

そして、新たな戦略を次々と打ち出してきた。2020年には機関投資家向けと同等のサービスを法人オーナーなどの営業部門が担当する顧客に提供する「CIOオフィス」を立ち上げた。レベルフィー(預かり資産残高ベースの料金体系)の導入準備も進めている。

ホールセール部門はもっと稼ぐ

今年に入ってからも、アセットマネジメント部門の廃止を発表し、新たに自己資金投資も行うインベストメントマネジメント部門を設立。独立系投資顧問会社のスパークスと提携し、未上場企業への投資も強化している。

また、5月12日の投資家向け説明会を前にした1週間で、オーストラリア・ニュージーランドでの戦略的提携や地銀との営業活動を前提にした新会社設立など、矢継ぎ早に新たな取り組みを発表した。

さらには、アメリカの顧客取引で巨額損失を出したホールセール部門の利益目標を見直した。2020年5月に2022年度の目標を1200億円(税前利益)を掲げていたが、これを1500億円に引き上げたのだ。主な理由は市場環境の変化への対応というが、反転攻勢への意識が透ける。

野村HDが推し進める急激な変革に、創業者である野村德七氏の「常に一歩前進することを心がけよ。停止は退歩を意味する」(野村ホールディングス・創業の精神)という言葉がよぎる。

4年後に迫る設立100周年に向けて、強固な独自の立ち位置を築けるのか。まずは投資家に対して結果を示すしかない。

梅垣 勇人 東洋経済 記者

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うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

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