野村HD、3100億円の“大やけど"でも強気一辺倒 法人部門の業績目標をさらに引き上げ反転攻勢に

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5月12日に開いた投資家向け戦略説明会のプレゼンテーションは1時間に及んだが、巨額損失の説明は冒頭の2分ほど。プレゼン後の質疑応答で、根本的な原因をどう考えているかを聞いても、「今取り組んでいる(ガバナンスやリスク管理の)強化策が足りていなかった」(奥田CEO)と答えるにとどまった。

あるアナリストは「欧米の金融機関と比べて説明の内容が不足しているとは思わない。だが、今後も同様の損失が発生しないとは言い切れない」と分析する。4月末にアメリカの現地法人の新社長にJPモルガン・アセット・マネジメントの元CEOを起用すると発表したほか、外部の専門家も交えた検証も実施しているという。ただ、ガバナンスに具体的にどんな問題があったのかを説明していないだけに、こうした対策の効果は不透明だ。

奥田CEOは今回、謝罪の言葉を口にしなかった。自ら非を認めることは野村のアイデンティティに関わるからだろう。

ビジネスモデルが根本的に違う

そのことを端的に表す指標がある。「市場リスクアセットがトレーディング資産に占める比率」だ。この比率が高いほど市場変動によって価格が変動するリスクの高い金融商品を扱っていることを意味する。

野村と同じくアメリカの顧客との取引で巨額損失を出したクレディスイスの比率は低いことから、一概にこの比率が高いほど巨額損失のリスクが高いということはできない。だが、ゴールドマン・サックスやJPモルガンなど、世界の有力投資銀行と比較しても、野村の市場リスクアセット比率は高い水準にある。

実際、国内大手証券の幹部は「リスクアセットの大きさをみてもわかるとおり、野村とウチはビジネスモデルが根本的に違う」とまで言う。この市場リスクアセット比率の高さは、野村の高い収益力の源泉にもなっている。

銀行グループではない野村のビジネスモデルは、世界で見ても特異だ。アメリカの証券会社(投資銀行)が政府による保護や安定した収益基盤を求めて、銀行持ち株会社化していったからだ。2008年にメリルリンチがバンク・オブ・アメリカに救済買収されたほか、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーも銀行持ち株会社に移行している。

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