異例の連続リコールの背景にあるのは、HVなどシステムが複雑化する一方で、開発や品質管理に十分なリソースを割けていなかったことだ。
新型フィットとヴェゼルのHVに搭載しているHVシステムは、従来のホンダのHVとはメカニズムがまったく異なる新規のもの。開発は初めてのものばかりで、機械的な複雑さだけでなく、自動変速機やクラッチ、エンジンの制御プログラムも、旧型HVのそれとは比較にならないほど膨大なものになった。自動パーキングも今回のフィットとヴェゼルのHVから初めて搭載したシステムだった。
世界同時開発の重荷
難易度の高いシステムに取り組むため、ホンダでも、旧モデルより多くの人員と時間を開発に投入した。しかし、ホンダでは、今回の新型フィット・ヴェゼル、さらに派生型のセダンの3姉妹車種を、短期間で世界中に投入する「世界同時開発」を掲げ、ただでさえ負荷の高い開発に、一層の負荷がかかった。
通常、世界各地にモデルを展開するにあたっては、先行して発売した日本のモデルをベースに、数年かけて順次、現地仕様に合わせた開発を行う。これに対して世界同時開発は、日本モデルと併行して世界各地の現地仕様車を開発し、日本での発売から間を空けずに展開していく。新モデルの”鮮度”を保ったまま世界展開を進め、部品の共通化や調達量をまとめることでコストダウンを図るのが狙いだ。
派生車種を含め世界各地のモデルを同時に開発するのであれば、従来、数年かけていた開発リソースを一気に注ぎ込む必要がある。だが、昨年9月のフィットHV発売の直前、ホンダの開発幹部は「従来に比べて実質的に開発リソースを削減され、苦労した」と振り返っている。日本の新モデルでリコールが相次ぐという状況からすれば、新技術に世界同時開発が重なり、結果的に、品質管理での詰めが十分でなかったといえる。
フィット、ヴェゼルは、いずれもホンダの国内販売を牽引する基幹車種だ。しかも、HVはホンダの技術力の象徴とも言える最先端のシステム。今回のリコールをもってしてもまだ終息しないようなことがあれば、ホンダの国内販売やブランド力にも大きな影響が出かねない。
(撮影:梅谷秀司)
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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama
個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職
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