――最新テクノロジーを生み出すような人材を育成するにはどうすればいいのでしょうか。
いろいろな大学や企業、研究者ともっとコミュニケーションが取れる場をつくるべきでしょう。それがまさにかつての米国のシリコンバレーだったわけです。名門のアイビーリーグが集まる東海岸と比べ、西海岸はスタンフォード大学とカリフォルニア工科大学くらいしかなかった。そこにいろいろな人が流入してきて、大学や企業が人材交流をしながら一大テクノロジー拠点を生み出すことになった。そのモデルが今、世界中に広がっているわけです。
いわゆる最新テクノロジーを生み出すエコシステムを構築していくには、モビリティーの高い組織や場所をつくる必要があると思っています。日本の大学でも、学生が一時休学してもいいからスタートアップやプロジェクトに関われるような仕組みをつくったほうがいい。
大学では、学問も大事ですが、文化や考え方、多様性、コミュニケーション能力も同様に学ぶべきです。とくに日本人は自分のことを相手に伝える能力が不得手です。海外と伍していくには、やはりコミュニケーション能力は欠かせません。
――なぜ日本の大学ではなかなか改革が進まないのでしょうか。
やりたいことと、やれることの間にまだ多少障壁があるのかもしれません。やれることなのに、やらせてもらえない場合や、やりたいことがあるのに、どのような枠組みでやっていいのかわからない場合も多い。これは企業も大学も同じですが、同じタイプの人間ばかりが集まっているところはなかなか改革ができないのです。そうした課題を解消するためにも、多様性を意識したチームをつくり、チームプレーでさまざまな要件をマッチングさせ、組み合わせることのできるプロデューサーが大学にも必要で、僕はそっちに回りたいと考えています。
――これからが楽しみですね。
いろいろと注文をつけてきましたが、基本的には皆さんと一緒に未来をつくりたいという思いがあります。それも日本に限らず、人類の未来をつくりたいのです。そのためにも、まずは枠を外して考えてみることが大切です。多くの人は考えるときに、所属している組織などの狭い枠をつくって、その中で何とか頑張ろうとする。
しかし、基本に立ち返って、一度枠を外して考えてみることが大事なのではないでしょうか。すべての人には子どもの頃の夢や、将来こうなりたいという希望があったはずです。もっと自由に発想して、目標に向かって一人で抱え込むのではなく、皆とよくコミュニケーションしながら取り組んでいく。社会で同じことを考えている人とコミュニケーションを始めてほしいのです。どこを卒業したとか、どこの研究室にいたとかは、あまり意味がない。バイネーム、バイチームで認識される人を輩出していきたいですよね。そういえば、近大の情報学部にいたよね、というのがいいと考えています。
(写真はすべて近畿大学提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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