久夛良木健「プレステの父」近畿大で教育に本腰 情報学部の学部長「面白いこと」やっていきたい

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同じタイプの人間ばかり集まっていては改革ができない

――久夛良木さんは、22年4月に開設予定の近畿大学情報学部の学部長に就任されるご予定です。学部長になったらどんなことに取り組んでいきますか。

まず考える力を養う教育を行っていきたいと考えています。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、今も学生たちは大学に入るまでの受験勉強型の教育の影響が残っています。そこを一回解きほぐさなければならないと思っています。また、大学はいろいろな勉強ができる、とても楽しい場所であることを学生たちと共有していきたい。そして、さまざまなプロジェクトをつくって、チームとして動けるように学生たちを巻き込んでいきたい。とにかく学生たちに「大学はつまらない」と感じさせたくないのです。

新学部では、海外の大学や研究者とコミュニケーションを取りながら、いろいろなことをコラボしてもいい。これは企業では当たり前のことです。しかし、それが今の大学では必ずしもできていない。狭いヒエラルキーの中で動いているように感じます。だからこそ、学生だけでなく、先生たちも伸び伸びと教鞭(きょうべん)が執れるようにしたり、研究室から何か仕掛けたりすることができるような環境をつくっていきたいですね。

――ビジネスで培った経験を大学でどう生かしていこうとお考えですか。

僕がCEOを務めているアセントロボティクスの社員は、国籍も出身大学もバラバラです。日本企業では出身大学をよく話題にしますが、僕はソニー時代から、誰がどこの大学出身なのか気にしたことは一度もありません。自分も問われたことはないし、話のネタになったこともありません。ソニーでは、学歴もキャリアパスも気にしなかった。大事なことは面白い仕事をするかどうか。私も近畿大学情報学部では、面白いことをやりそうな先生と学生をたくさん集めて、いろいろなことにトライして、面白いことをやっていきたいと考えています。

近畿大学 情報学部では1年次の共通教養科目をすべてオンデマンド配信で、必修科目は対面授業で実施。2年次からはライブ配信の授業を活用するなど多様な形態で授業を行う予定だ。並行して1〜3年生まで1クラス10名程度の少人数ゼミを対面授業で毎セメスター開催し、卒業研究につなげるという

――日本の大学では理系の志望者が少ないといわれていますが、どう評価されますか。

日本で言う理系とは、工業系の意味合いが強く、本来の意味でのサイエンスには程遠いように見えます。しかも今の大学の工業系は、インダストリー3.0あたりで止まっているような感じがします。AIやIoTといった最新テクノロジーが浸透していく中で、過去に栄えたテーマを今教えてどうするのか。実際、サイエンスの世界で今ホットな領域は、残念なことに日本が遅れている分野です。こうした状況を改善してくためにも、最先端テクノロジーに関わるサイエンスをもっと教えていくべきです。

さらに言えば、これから文系、理系と分けることも意味がなくなっていくと思います。今、新たなテクノロジーを生み出していくには、新たな枠組みでの文系、理系の両方の知恵が必要になってきます。現在のスタートアップ企業では、とくに文理が融合した発想が重要です。大学でもそんなスタートアップのチームをつくれるようなフレームワークができればいいと思いますね。

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