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『論語と算盤』渋沢栄一 守屋淳(訳) ちくま新書
成功や失敗といった価値観から抜け出して、超然と自立し、正しい行為の道筋にそって行動し続けるなら、成功や失敗などとはレベルの違う、価値ある生涯をおくることができる。
2024年度から1万円札の「顔」となる渋沢栄一は、明治の実業界を取り仕切り、近代日本の礎を築いたひとり。自身の思想を明らかにした書は、『論語と算盤』という一風変わったタイトルを持つ。
この意味するところは、「論語」が道徳を指し、「算盤」はビジネス感覚を示している。人が何かを成すにはこの双方が必要であり、かけ離れているように見える両者は実はとても近しい関係にある。
「算盤」たるビジネスの世界で成功するには、「論語」が示すような伝統的・道徳的価値観が重要になるし、「論語」が象徴する道徳も「算盤」による経済的基盤がなければ実践できないということだ。
俊才の誉れ高き平安時代の学者・菅原道真はかつて「和魂漢才」を唱えた。日本古来の精神に中国の技術や知識を合わせて、力を発揮しようというものだった。これになぞらえて渋沢は「士魂商才」を掲げた。武士の精神と商人の才覚を併せ持つことを提唱したのである。
生きる指針としては「蟹穴主義」も肝要だと説いた。蟹は自分の甲羅の大きさとかたちに合わせて穴を掘る。自分のテリトリーをしっかりと見定め、身の丈に合った言動を心がけよというのだ。
実際に渋沢は、やれ大蔵大臣になれ日本銀行総裁になれだの、政府から要職に就いてほしいだのと要請がひっきりなしにあった。それでもいつだって、「実業界に穴を掘って入ったのであるから、今さらその穴をはい出すこともできない」と固辞するばかり。蟹穴主義を貫いたのだった。
『論語と算盤』まとめ
実業の世界の第一人者として終生、わが道を歩んだ渋沢栄一だが、彼が利己的だったのかといえばまったく違う。関東大震災に見舞われた際には、自身の事務所まで焼失したというのに、ひたすら東京の復興再建に精力を注いだ。いつだって義のため、社会のために行動を尽くした。
まさに「論語と算盤」を両立させる思想を、若き頃から晩年まで貫いたのだ。一生を貫くような基本方針に出逢うタイミングは、早いほうがいい。青春時代には、自分の代名詞となるような指針を見出すことにこそ、全力を注ぐべきだ。
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