政府発表は大きく異なるインド・コロナ危機 火葬が間に合わず葬場外に何時間も死体が放置

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インド各地の火葬場や埋葬地には遺体が山積みにされ、新型コロナウイルス感染による実際の死者数が政府の公式発表よりもはるかに多いのではないかという懸念が広がっている。医療体制を逼迫(ひっぱく)させている感染再拡大の深刻さが甘く見積もられている可能性がある。

インドの幾つかの都市では、病院で新型コロナ関連死と確認され、保護カバーに包まれた遺体が火葬場の外に何時間も放置されているという衝撃的な状況が報告されている。ブルームバーグが少なくとも5都市の火葬場で遺族や作業員、立会人から集めた証言は、コロナ感染による実際の死者数が州政府保健当局の報告よりもはるかに多い可能性を示唆している。

火葬場で祈りをささげる遺族(ニューデリー、4月19日)

インドの1日当たりの新規感染者数は22日に世界最多を更新していたが、23日にはこれをさらに上回る33万2730人の死亡が新たに報告された。累計感染者数は1600万人を超え、米国に次ぎ世界で2番目に多い。

インドの死者数の集計方法についてはコロナ危機前から不明確な点が指摘されてきた。特に農村部では自宅での死亡が大半で、記録に反映されないことが多い。記載された死因が老衰や心臓発作などであることも多く、適切な医学的証明書のある死者数は全体の20ー30%にすぎないと専門家は推計している。

インドのコロナ危機の現状Source: Bloomberg

コンサルティング会社IPEグローバルの最高戦略責任者(CSO)、ヒマンシュ・シッカ氏は、死者数が正確に把握されていないため、「メディアは裏付けに乏しい事例を紹介しており、全体的に制御された状況にあるとの誤解が生じ得る」と指摘。「これは感染第3波の可能性に備えるために必要な今後の準備や対策を損なうことになる」と述べた。

インドで最も人口の多いウッタルプラデシュ州の州都ラクノーでは、今月11日から16日までの新型コロナ感染による死者数が政府の公式統計では145人。一方、複数の立会人や作業員が取材に答える権限がないとして匿名で証言したところによると、市内の主要な火葬場のうち2カ所で報告された火葬件数は430件余りで、同期間中にコロナ対策の手順に従って行われた火葬件数の約3倍だという。これには市内の小規模の火葬場での埋葬や葬儀は含まれていないという。

ラクノーの火葬場(4月15日)

モディ首相の出身地であるグジャラート州の工業都市スーラト。火葬場を運営する委託会社の責任者によると、コロナ対策で義務付けられた保護カバーに包まれた遺体がこの10日間に1日当たり少なくとも100体持ち込まれたという。市当局は19日、新型コロナ感染による死者数を28人と公表していた。

グジャラート州政府の報道官にコメントを求めたが今のところ返答はない。

病床の逼迫状況を示すボード(ニューデリー、4月21日)写真:Anindito Mukherjee / Bloomberg

感染者急増で全国の病院で病床や医療用酸素、医薬品が不足している。ニューデリーの主要病院の一つであるサー・ガンガ・ラム病院は23日、医療用酸素が2時間分を切り、コロナ重症患者60人以上がリスクにさらされていると訴えた。

連邦政府の保健・家族福祉省に電子メールでコメントを求めたが返答はなかった。

原題:Even Record Death Toll May Hide Extent of India’s Covid Crisis(抜粋)

著者:Upmanyu Trivedi、Sudhi Ranjan Sen

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