小学生で「ヤングケアラー」となった彼女の苦悩 「親を子育て」今も虐待後遺症や精神疾患に悩む

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亜希さんは現在、両親とはほぼ絶縁状態だということです。母親に対しては、だいぶ前から「わかり合える人ではない」とあきらめて連絡を絶っており、数年前には父親からも連絡が来ないよう、携帯電話の番号やLINEのアカウントを変更しています。

父親は暴力をふるったことはないものの、両親の問題が子どもに与えた影響をまったく自覚できず、亜希さんに自分の愚痴を聞かせるばかりでした。そのうえ、お酒を飲むと亜希さんが傷つくことを告げるため、もうかかわる必要はないと判断したのです。

「子どものときに『ああ、私、親を子育てしてるな』って、はっきり言葉で思っていたんですよね。生意気ですけれど。親に教えられたこととか、そういうものが一切なくて。言われて響いたこととか、『こうやって生きていけばいいんだ』という受け取れたメッセージが、何一つ残っていない。むしろ反面教師にすべきことばかり。

私のほうから『こうやって関係性を作っていこうよ』とか、父と母に働きかけ続けてきたんですけれど、結局は何も実らなかった。本当に、親を子育てしてきた感覚というのが私のなかには強くあって。意外とそういうお子さんは多いのかもしれないな、と思っています」

「家族」に頼りすぎるから、ヤングケアラーが生まれる

ヤングケアラーだったことについては、こんなふうに感じているといいます。

「国もそうですけど、家族、世帯という単位に頼りすぎちゃっているから、ヤングケアラーが生まれるんじゃないかなと思います。家族だからケアすることが当たり前というふうに、いまは社会全体が思っちゃっているけれど、個人個人にだって生活がありますし、人生がある。だけれど結局『家族のなかで、なんとかしてよ』という制度だったりするじゃないですか。それはやっぱりまずいな、というのを一番思います」

そしていま、かつての亜希さんのような状況にある人には、こんなことを伝えたいそう。

「自分の違和感かとかストレス、不安だったり、むかむかしたり、いろんな形で出てくると思うんですけれど。『これは何から来ているのかな』というのを、しんどいと思うけど、探ってみてほしいなって思います。『あのとき、お母さんにああ言われたことから来てるのかな』とか『お父さんにあのとき殴られたときの感覚なのかな』とか。

絶対しんどさを伴うんですけど、そこを見つめ続けて、たくさん葛藤して、その先に見えてくる自分なりの正解があると思うんです。それは親との和解という場合もあると思うし、絶縁という場合もあると思いますし、あとは適度に付き合っていく、とか。そういうところをうまく見つけていけたらラクになるのかな、というのは感じますね」

取材から5カ月。今月ひさしぶりに亜希さんに連絡したところ、なかなか連絡がつきませんでした。ようやく話を聞いたところ、その後、PTSDやうつの症状が悪化して苦しんでいたことを教えてくれました。いまは、体調を崩しながらもなんとか働いているといいます。一進一退で、でもちょっとずつ前に進んでいる、亜希さんなのでした。

大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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