世界の外貨準備運用でドル離れが進んでいる 各国政府の準備資産はどこに向かっているのか

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これらの動きの背景には何があるだろうか。2020年は第2次世界大戦後以来の大幅な財政赤字を記録し、「ドルの過剰感」をテーマとしてドル安が進んだ年であった。紋切型の解説を承知で言えば、コロナショックの下、ドルの信認毀損を懸念し、外貨準備運用においてドル離れが進んだといったところだろう。しかし、今回見られたような動きは近年に共通した傾向であり、一過性の動きとは言えない。前掲のグラフのようにドル比率の低下傾向は一貫している。

新時代の外貨準備は「多様化」「非ドル化」

そこで四半期ベースの比率が取得できるようになった1999年3月と2020年12月を定点比較してみた。この21年9カ月の間にドル比率は12.17%ポイントも低下している。1999年以降の外貨準備の潮流として「ドル離れ」は間違いなく指摘できる事実だ。1999年といえばユーロが誕生した年であり、「第2の基軸通貨」としてユーロがドルからシェアを奪ったのではないかと思われがちだが、そうではない。

この間、ユーロは3.12%ポイントしか増えていない。英ポンドは1.95%ポイント増え、円やスイスフランは概ね横ばいである。では、受け皿となったのは何か。最も大きかったのが豪ドル、カナダドル、人民元を含む「その他」であり、計7.15%ポイントも増えている。これは主要通貨の伸び幅と比べても抜きん出て大きい(2012年10~12月期より前には豪ドル、カナダドル、人民元はまとめて「その他」として公表されていた)。

こうした過去20年余りにおける世界の外貨準備運用を一言で表すとしたら「多様化」や「非ドル化」といったフレーズが適切であろう。より具体的には、その行き先として選ばれているのがユーロや円といった主要通貨ではなく人民元を筆頭とする新興・資源国通貨であるという事実も、外貨準備運用の新時代を象徴する論点として押さえておきたい。

主要国の金利が軒並み消滅する中にあって、従来型の運用を続ける利点は薄らいでいることから、こうした多様化の流れは新しい動きとして当面継続するものと考えておきたい。さらに未来の話としては、法定通貨以外の資産、民間発行のデジタル通貨などが外貨準備運用の世界に割って入ってくる可能性も議論にのぼってくるだろう。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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