「日本のヒーロー」には普遍的な魅力がある 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』ダグ・リーマン監督に聞く

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時間があれば秋葉原にいきたい!

DOUG LIMAN (ダグ・リーマン)●1996年、インディペンデント・コメディ『スウィンガーズ』で初めて大きな注目を集めた。この作品はすぐにカルト的な人気を博し、続くインディ系のヒット作『GO』(99)で、インディペンデント・スピリット賞の最優秀監督賞にノミネートされた。これら2本のインディペンデント映画を監督しただけの実績しかなかったが、作家ロバート・ラドラムに会うためにティートン山脈に赴き、『ボーン・アイデンティティー』(02)の映画化権を獲得した。同作では監督と製作を兼ね、マット・デイモン主演で、世界中で2億1400万ドル以上の収益をあげた。シリーズ第2弾『ボーン・スプレマシー』(04)、第3弾『ボーン・アルティメイタム』(07)では製作総指揮を務めた。その他の監督作として、ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー主演のアクションコメディ『Mr.& Mrs. スミス』(05)、『ジャンパー』(08)、『フェア・ゲーム』(10)などがある。テレビでは「コバート・アフェア」の41エピソード(10~13)、「SUITS/スーツ」の28エピソード(11~14)などで製作総指揮を務めている。(撮影:梅谷秀司)

――そもそも桜坂さんの原作では、主人公のケイジは訓練校を出たばかりの初年兵の若者という設定でした。しかし、この映画の制作が決定したときには、そんな主人公をトム・クルーズがやることに決まり、ファンの間からは賛否両論の声がわき上がりました。その辺のプレッシャーはどう考えたのでしょうか?

 ファンにとって桜坂さんの原作は神聖なものであり、それを僕に託されたわけだから、そういったファンの信頼は裏切りたくなかった。でも、映画化にあたり、桜坂さんからは「僕は小説を書いたけど、あなたは映画を作るんだから、最高の映画にしてください」と言われたんだ。設定の変更はあったけども、小説のテーマとなる大事な部分はきちんと残している。もちろん日本の観客のことは意識した。だって『オール・ユー・ニード・イズ・キル』は日本のものだからね。

たとえば、(1997年の映画)『スターシップ・トゥルーパーズ』には、ロバート・A・ハインラインの原作に出てきたパワード・スーツが出てこなかった。その決定にはやっぱりみんな落胆したと思う。このように、昔から小説で描かれているものが、映画では描かれていないというようなことはけっこうあった。でも、僕たちとしては、日本の観客が望む作品を提供したい。だから、原作に出てきた機動ジャケットは描かなくてはならないと思ったわけだ。

――日本のコンテンツの魅力は?

まずすごく知的であるということ。非常に考え抜かれた物語だ。世界的に見ても、日本のヒーローには普遍的な魅力がある。そういったところが魅力だね。

僕はとにかく日本が大好きなんだ。日本に来るたびにJRや地下鉄に乗って、あちこち行っているよ。僕は日本で迷うのが好きなんだ。自力でホテルまで戻るのも楽しい。それから東北の秋田県の温泉旅館に泊まったこともある。あれは生涯でもっともロマンチックな体験のひとつで、夢のようなひとときだった。それから秋葉原も好き。僕は自分でものを作るのが好きなんだけど、あそこに行くと、僕と同じようなもの作りが好きな人がたくさんいる。世界中どこを見渡しても、そういう街は秋葉原しかない。今日だって時間があれば秋葉原に行きたいよ! 映画に出てくる機動ジャケットを自作してみたいね。

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