ファミマが「マック回復の立役者」に託す改革 脱最下位狙い敏腕マーケターを外部から招聘

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3つ目は、「マニュアル的」な商品発注だ。売れ筋商品は、店舗の立地や客層などの組み合わせで大きく異なる。が、ファミマでは強化すべき商品分野を店舗ごとに打ち出させていなかった。加盟店の店長など発注担当者によって、しっかりと売れる商品を見極める力量にもばらつきがあった。今後は発注の自動化などを進め、その店舗における売れ筋商品を高い精度で発注できるようにしていく。

ファミマが新たな定番商品への育成を狙っている「クリスピーチキン」(撮影:梅谷秀司)

こうした改善を施した成果が、新商品「クリスピーチキン」に早速表れたと足立氏は強調する。同商品は「ファミチキ越えの問題児」をキャッチフレーズに掲げ、新たな定番化を目指して3月2日に発売した。これまでの商品と比較して広告に大きな金額をかけたわけではないが、店頭やSNSなどで複合的・大々的な告知を行った結果、販売が好調に推移し現在は品薄となっている。

新たな客層への訴求にも力を入れる構えだ。現在、ファミマの中心顧客は20~50代の男性で、「がっつり系の弁当やラーメンを食べる」という昔ながらのコンビニ客層だ。それらの人々の購入が同社売り上げのおよそ半分を占める。

プライベートブランドの総菜に注力するセブンや、スイーツ商品のヒットで女性客を取り込んだローソンと比較すると、顧客層の広がりに欠ける。そこで今後は、子どもを持つ30~40代のファミリー層と、人口の半分を占めるシニア層の来店増加を目指すべく、具体策を詰めていく。

伊藤忠商事との間に「軋轢はない」

ファミマの改革に当たって気になるのが、伊藤忠商事の存在だ。同社は2020年に約5800億円を投じファミマにTOB(株式公開買い付け)を実施、現在はファミマ株式の90%超を保有する親会社だ。

この点に関し足立氏は、「伊藤忠は大きなお金を入れたので、『会社(=ファミマ)をよくしないと』と皆さん必死。同志だと思っている。もちろん伊藤忠に相談することはあるが、『これをやりなさい』みたいに言われたことはない」と話す。

今年3月に伊藤忠商事から迎え入れられた細見研介・ファミマ社長(撮影:梅谷秀司)

ファミマは3月1日、伊藤忠から細見研介氏を社長として迎え入れた。ほかにも多くの伊藤忠出身者がファミマで働く。伊藤忠とファミマの関係をめぐっては、伊藤忠が事業拡大を優先するあまりファミマの意向が尊重されず、両者間に軋轢が生まれていると見る向きもある。だが足立氏は「軋轢はどこにあるのか不思議」「伊藤忠(の存在)はプラスでしかない」と楽観的だ。

ファミマは組織全体に変革を起こす役割も足立氏に期待する。マーケティング面に限らず、さまざまな会社で活躍してきた足立氏の考え方や行動に学び、人脈などネットワークの吸収も図りたい考えだ。

入社前、周囲から「ファミマの企業文化と水が合わないのでは」と心配された足立氏。既存の経営陣とうまく渡り合い、さらにポテンシャルを発揮できるか。最下位脱出の成否はそこに懸かっている。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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