2匹目の「うなぎパイ」はこうして生まれた 浜松の老舗菓子店が半世紀ぶりに新ブランドを投入

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発表会では、職人が自慢の手技を披露した

そんな時、小田木主任たちの目にとまったのが、地元・浜松特産のじゃがいも「三方原ばれいしょ」だった。じゃがいもをパイ生地に混ぜ合わせれば、うなぎパイと食い合わない、新しい風味のパイができそうだ。

だが、その後もまだ難題が残っていた。当初はじゃがいもを蒸してから生地に混ぜていたが、それだと水分が多くなる。生地が膨らまず、食感もサクサクには程遠かった。それならばと、じゃがいもをパウダー状にしてみたが、でんぷん質の後味が悪く、そのままでは商品化できなかった。

そこで考案したのが、ポテトチップの発想で、生地を焼き上げる前に塩を振りかけるというものだった。ただ、一般的な塩を使うと、塩味が強すぎて、お菓子には向かなかった。ブレークスルーとなったのが、うなぎパイを作ってきた職人の手技だった。

一般的な塩から粗塩に切り替え、職人が手作業で振りかけた。すると、塩のかかった部分がまだらになり、程よく塩味の利いた、お菓子にも食事にもなるパイができた。地元企業の協力によって、でんぷん質の嫌な後味を残さない技術も編み出した。

5年後に年商10億円を狙う

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新入社員の山田ニナさん(左から2人目)がnicoeのPRを担当

こうして、プロジェクト発足から足かけ3年を費やし、coneriが誕生した。この進化形パイは、春華堂が7月20日に浜松市内にオープンする産業観光施設「nicoe(ニコエ)」で販売される。また、同日からインターネットでの販売もスタートする。

5年後の年商目標は10億円。春華堂としては、首都圏はもちろん、海外にも店舗を構えたい考えだ。小田木主任は「少しでも多くの人に、パイ文化を広めたい」と意気込む。2匹目のドジョウならぬ、“2ヒット目のうなぎパイ”となるか。浜松銘菓で培ってきた職人技の真価が試される。

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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