「報ステ」炎上CMでわかったニュース番組の高慢 テレ朝焦りの背景に20~34歳女性視聴率の低さ

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CL6:民放テレビで気晴らし型」は若い世代にもそれなりにいる。「CL1:古き佳きマス社会型」は若い層ではわずかで、50代60代に圧倒的に多い。あくまでも筆者独自の解釈だが、この層こそが「報ステ」のような地上波の帯番組のニュースを見る人たちで、調査にはなかったが70代の団塊世代ではもっと多いと推測できる。ニュース番組で一生懸命世の中のことを知ろうとするのは、年配の男性中心なのだ。

炎上したWeb用CMでジェンダーうんぬんとは別に、圧倒的に気になったことがある。それは最後の「こいつ報ステみてるな」のフレーズだ。「いや、みてないし!」と心の中でつっこんだのは、私だけではないだろう。

炎上CMが炙り出した作り手の問題点

ジェンダー論の扱いや、演出への違和感(久しぶりにキャピキャピした、の言葉を思い出した)を横に置くと、CMに登場しているような女性は現実にいるのかもしれない。おそらく企画意図としては「いまの若い世代は化粧水と消費税の話題を同じように語る」と言いたかったのだろう。

それはそう思う。特にコロナ禍で社会への問題意識を持つ若い世代が増えたことは周囲を見て実感する。ただ、彼ら彼女らの多くが「報ステ」は見ていない。平日夜10時にテレビ朝日系で放送されていることすら知らないかもしれない。

ニュースはLINEニュースやスマートニュースで見るのだ(Yahoo!ニュースではない)。マスメディアのニュース番組はそれぐらい若い世代と距離ができてしまっている。

ジェンダー論とは別になんとなく不快に感じたのは、社会に関心の高い若い女性がいたら「こいつ報ステみてるな」と言えてしまう尊大さ、勘違いぶりにもあったのだと思う。これでは上滑りして、まったく広告効果が望めない。

ニュース番組の作り手が「古き佳きマス社会型」ばかりを相手にしてきて、その向こうにいる人びとの感覚が見えなくなっている証ではないか。これは「報ステ」だけの問題ではない。大きく言えば新聞も含んだニュースの作り手たちは、「古き佳き」視聴者つまり高齢の政治好き(政局好き?)を重視してきたように思う。

30代40代の報道局員でさえ、感覚が団塊の世代と同化している人をよく見かける。日本を憂えてニュースを作り、若い世代を「なぜニュースを見ないのか」と嘆く一方で、究極の“ボーイズクラブ”(男社会)で長年やってきたのでジェンダー意識はひときわ低い。そんな作り手の問題点を今回の炎上CMは炙り出した。

ニュース番組と若者の距離を作ってきたのは若者ではない、作り手の側なのだ。女性キャスターの横に新聞や通信社の“おじさま”を据える感覚が、若者との隔たりを生んできたように思う。もはや幻想とも言える若い視聴者像を描いて「こいつおれのニュースみてるな」と見下ろすのではなく、若者と同じ場所からニュースを発信することが2021年のテレビ局には必要だ。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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