コロナで変動「公示地価」は下がり続けるのか ステイホームと巣ごもり需要で各地に明暗
その1つ、千葉県の松戸エリアでは物流施設の整備が進んでおり、タイミングよく東京外かく環状道路の千葉県区間が開通したことで、広域的なアクセス性が向上し、松戸の地価は10.8%のプラスとなった。
また、同じ理由で横浜市の鶴見区も11.1%上昇している。不要不急の外出自粛による巣ごもり消費や、テレワークの導入に伴う在宅勤務の浸透が公示地価を底上げしている。時代のニーズと土地需要が合致し、相乗効果を創出できれば資産性は高まり、地価上昇につながる仕組みだ。
エリアによる濃淡(多極化)がさらに加速する
では最後、今後の地価動向を展望してみよう。6年ぶりに下落に転じた公示地価は、今後も下げ続けるのだろうか。
不動産価格は3つの価格形成要因、(1)不動産の効用(収益性)、(2)相対的な希少性(費用性)、(3)不動産に対する有効需要(市場性) ―― これらの相互作用によって形成される。
- ・収益性:その不動産から、いくらの利益が得られるか?
- ・費用性:その不動産を手に入れるのに必要な費用(取得コスト)はいくらか?
- ・市場性:類似物件が市場ではいくらで取り引きされているか?
一例として、室内から東京タワーが見えるタワーマンションをイメージしてみよう。販売価格(=費用)は高額になるが、その分、高い希少価値が見込まれる。(2)の相対的な希少性とは、「高い希少性」=「取得価格も高額になる」という相関関係を意味する。
高級ブランド品が高額にもかかわらず、人気が衰えないのと同様に、東京都心5区の中古マンションは値崩れしにくい。収益性、費用性(希少性)、市場性の3要素が作用し合い、価格を高位状態で維持できるからだ。
振り返れば、昨年(2020年)の公示地価は5年連続の上昇となった。三大都市圏、地方圏ともに回復の動きは再開発が進む都市部やその周辺、訪日外国人客の見込める観光地などに集中した。調査地点の7割は上昇したが、残り3割は依然として下落が続いた。
今年の公示地価は6年ぶりの下落となったが、国土交通省は「全体的に弱含みとなっているが、(中略)地価動向の変化の程度は用途や地域により異なっている」と説明する。ピンポイントでの地価変動が随所で確認されたのだ。
以上より、今後の公示地価はエリアによる価格の濃淡がより強くなると予測する。価格形成の単位が「面」から「点」へと移り変わり、地価は選別・多極化の様相を深めることになるだろう。
「第4波」の懸念は残るものの、まもなくワクチンの本格接種が始まる。悲観論と楽観論が交錯するなか、パンデミック後の世界は「まだら模様」の地価構成になるものと予想している。
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