コロナで変動「公示地価」は下がり続けるのか ステイホームと巣ごもり需要で各地に明暗

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同様に、台東区浅草もインバウンド消費の蒸発で地価が押し下げられた。浅草はここ数年、東京オリンピックの開催に合わせてホテル建設が進んでおり、「五輪特需」が牽引役となって地価上昇をもたらしてきた。

しかし、コロナショックによって外国人客の訪日が見込めなくなり、ホテルの閉館や開業延期が相次いだ。その結果、浅草は東京圏の商業地の下落率・第2位と第3位にランクインし、つくばエクスプレス「浅草駅」近くと地下鉄「浅草駅」前の調査地点がそろって約12%下落した。

その他、関西圏の商業地もダメージを避けられなかった。全国の商業地で最も下落したのが大阪の道頓堀(マイナス28.0%)だ。しかも、下落した全国の商業地10地点のうち8地点が道頓堀など繁華街・ミナミの周辺だった。新型コロナウイルスの感染拡大で、観光需要の減退や飲食業の不振が相次いだ。インバウンドの波に乗り、地価が急上昇していた反動が公示地価を大きく押し下げた。

巣ごもり需要とテレワーク普及が地価上昇を後押し

となると、気になるのが今後の動向だ。本格的なコロナデフレに突入するのではないかという一抹の不安が脳裏をよぎる。

しかし今回、「3密」回避に伴う各人の行動変容や、ステイホームによる巣ごもり需要が地価上昇要因として作用している事象が散見された。無論、テレワークの普及による住宅観の変化も無視できない。

静岡県の熱海市は、首都圏居住者を中心に別荘やセカンドハウスとしての中古マンションや一戸建てが人気を集めている。そのため、熱海駅から徒歩圏にある「熱海市春日町」は県内の住宅地で上昇率が第1位(プラス1.3%)となった。静岡県内の住宅地全体が13年連続で下落(マイナス1.5%)する中、交通利便性の高い「駅近」物件だけに人気が集中している構図が垣間見られる。

同様に、日本を代表する有数のリゾート地・長野県軽井沢も公示地価が上昇した。首都圏の高所得者層を中心とする別荘地需要が下支えとなり、住宅地・商業地いずれも上昇傾向にある。

こちらも長野県内全体では住宅地が24年連続で下落し(マイナス0.4%)、商業地が29年連続で下落(マイナス1.1%)するなか、軽井沢町と白馬村が局地的な地価上昇を演じている。今回、こうしたピンポイントによる地価の上昇が特徴の1つとして挙げられる。

加えて、ステイホームによる巣ごもり需要も公示地価を押し上げた。通販人気による宅配需要の高まりを受け、物流施設のニーズ増が土地価格を上昇させた。

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