名刺管理Sansan社長が徳島に高専をつくるわけ

20年ぶりの新設高専、狙いは「野武士」の育成

同校が輩出したい人物像は「起業するデザインエンジニア」。つまり進学や就職ですでにある職業に就くのではなく、自分の未来を自分で創造できる人材だ。「グローバルリーダーではなく、野武士。実戦で戦えるスキルを身につけた野武士たちが少しずつ世界を変えていく。神山から未来のシリコンバレーが生まれていくような未来を考えている」(寺田氏)。

寺田氏が高専設立に力を入れるのは、教育を未来に向けた投資ととらえているためだ。寺田氏は「15歳から20歳までという最も可能性に満ちた若者たちの教育を通して、世の中になかったものを作れる人材を生み出したい。1学年たった40人かもしれないが、起業家精神やデザイン思考など、伝えたいことを5年間に凝縮する」と意気込む。

開校予定地は一風変わった田舎町

開校予定地となる神山町は、徳島空港から約50キロの位置にある。人口5000人の小さな田舎町だが、2000年ごろから光ファイバーの高速通信網が町内全域に構築されている。

Sansanは2010年、当時まだ珍しかったサテライトオフィスを同町に開設。町で活動し、移住や支援などを行うNPO法人「グリーンバレー」の理事である大南信也氏との交流があったためだ。社員数人が同町に常駐するほか、研修などで活用してきた。その後、神山町には10社以上のIT企業もサテライトオフィスを開設し、今や「テレワークの町」として知られている。

寺田氏は、Sansan創業前に勤めていた三井物産でシリコンバレー駐在を経験しており、地方からユニークでクリエーティブなものが生み出されていくことに強い関心があった。神山町はSansanと縁の深い町だったが、新設高専の本拠地に同町を選んだのにもこうした動機もあった。

左から理事長に就任する寺田親弘氏、学校長の大蔵峰樹氏、クリエイティブディレクター兼理事の山川咲氏(写真:神山まるごと高専設立準備委員会)

今回、学校運営の中核を担う3人はいずれも起業家だ。同校理事長には寺田氏が就任。クリエイティブディレクター兼理事には、1組ごとに完全オリジナルのウェディングを企画・プロデュースするCrazy Weddingの創業者・山川咲氏が、学校長にはZOZOでCTO(最高技術責任者)を務めた経験を持つ大蔵峰樹氏がそれぞれ就任する。

大蔵氏自身、国立福井高専を出ており、教員採用やカリキュラム設計を担う。山川氏は、学校のブランディングや情報発信などを統括する。寺田氏は学校経営の最高責任者として2年後の開校に向けて準備を進めていく。山川氏は「学校づくりも1つのスタートアップ。創業メンバーとして、誰も見たことのない学校を生み出すディレクションをしたい」と意気込む。

寺田氏が教育の分野への進出を考え始めたのは2017年ごろ。当初はアイデア出しや資金支援の形で関わることを想定していた。しかし、教育分野での実績のある人物や起業経験のある人物を口説いて回ったが、引き受け手がおらず、理事長選びは難航した。最終的に山川氏から言われた「ある言葉」が理事長就任の決め手となった。

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