「不動産目当てのM&A」コロナでじわり広がる訳

保有不動産に重きを置いた企業買収が増加

不動産業でもM&Aが活発化。だが通常の企業買収とは一味違う。写真はイメージ(撮影:今井康一)

大阪・地下鉄なんば駅付近で建設が進む「アパホテルなんば心斎橋西」。2021年5月に開業を控えるこのホテルが立つ土地は、アパグループが2018年に駐車場運営企業の買収に伴い取得した土地だ。

不動産業界では目下、「不動産M&A」と呼ばれる手法が広まりつつある。通常の買収事案とは少し事情が異なり、売り手企業が営む事業よりも、むしろ保有する不動産に取引の主眼が置かれていることが特徴だ。

大きな節税効果

「地方銀行から案件が持ち込まれている」。不動産仲介大手、三菱地所リアルエステートサービスの中矢一国・流通事業グループアドバイザリー部長はそう話す。

同社は2020年4月に不動産M&Aを仲介する専門部署を創設。成約実績はまだないが、1年弱で約40件の相談を受けた。売り手企業の多くは地方都市の老舗で、うち3分の2は後継者問題を抱えた企業だという。

M&A案件が専門の仲介会社ではなく、あえて不動産仲介会社に持ち込む売り手企業は、複数の不動産を所有しているケースが多い。「ホテルや旅館など宿泊施設を筆頭に、工場やビルなどさまざまな物件を持っていることがある」(中矢氏)。

物件を個別に売るよりも、物件を保有する法人ごと売却するのが不動産M&Aのキモ。M&Aといっても事業承継が行われず、従業員は全員離職し、買収後は法人も解散。残るのは売り手企業が元々保有していた物件だけ、という取引も少なくない。

譲渡企業の目的は節税効果だ。物件を個別に売却してから法人を解散する場合、まず物件売却益に最大約35%の法人税が課せられ、課税後の利益を分配すればさらに最大50%の所得税がかかる。売却益が10億円なら、最終的な手残りは3億円強にまで縮んでしまう。

一方、物件を保有する法人ごと身売りをすれば、同じ売却益10億円は株式譲渡所得として扱われる。課税は最大で約20%に留まり、8億円が手元に残る計算だ。事業承継に悩む企業は社歴が長く、不動産の簿価も低いため多額の売却益が計上されてしまうことから節税効果は小さくない。

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