常に受け身な「ロボット社員」変えた意外な一言 覚えておきたい「指示待ち人間」の動かし方

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それには「なぜ、能動的、積極的な動きをしなければならないのか」について自分自身が納得する動機が必要です。

もっとも強い動機というのは「それが自分のやりたいことだから」に違いありません。私たちが趣味に没頭するのは、それが自分の好きなこと、やりたいことだからです。

なぜ「ロボット社員のCさん」は変われたのか?

人は「やりたいこと」をやる時がもっともモチベーションが高まります。この特性を部下や新人の育成に利用しない手はありません。

ある通信会社でMA(マーケティング・オートメーション)の部門の業績を急伸させたCさんも、新人時代は、配属された技術部門の上司から「言われたことしかしないロボット社員」と目されていました。

上司の目には、Cさんは地頭はいいけれど、自らは動こうとしない受け身な部下に映っていたので、半期の評価面談の際に「Cさん、ホントは何がやりたくてこの会社に入ったの?」と聞いてみたのです。

正直、きっと「特にありません」と返答するんだろうな、と思いつつ聞いたのですが、予想もしない言葉が返ってきました。「MA(マーケティング・オートメーション)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)がやりたくてこの会社に入りました」と言うではありませんか。

正直、驚きました。そんな最先端の分野に興味を持っていたとは。ちょうど、Cさんの会社の営業部門にも顧客からMAやDXに関する相談が増えてきており、対応する技術部門でも専門部隊を設立する動きがありました。

そのことをCさんに話すと、表情がパッと明るくなり、その専門部隊でぜひ仕事がしたいと言うのです。

上司にとっては同じ部門ですし、今後成長する分野でしたので「渡りに船」ということで、Cさんをその部隊に入れてみたのです。すると、どうでしょう。以前とは全くの別人で、すでに情報を収集し勉強していた各国の先進事例を紹介する勉強会を主催し始めたのです。各社のセミナーに片っ端から参加し知見を蓄積していたため、顧客のお困りごとや課題のヒントになる話ができる技術者ということで、営業から重宝されるようになっていきました。

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そもそもがマニアですから、やたらと詳しく、お客様が知りたいことに的確に回答できるのです。

Cさんにとっては、お客様の前で自分の知っていることを話し、役に立ちそうな提案をするだけで、「ありがとう」と感謝され、自社の営業からも「ありがとう」という言葉をかけてもらえるため、自己効力感が満たされ、充実した日々が送れるようになりました。

さて、ここでは「働く動機」に着火させた事例を紹介しましたが、これは「頑張る動機」に置き換えてもかまいません。

私たち人間は、働く動機や理由、頑張る動機や理由が自分の中で明確になったとき、まるでスイッチが入ったように能動的にもなれるし、頑張れるようにできています。

ぜひ、この特性を部下や後輩の育成にも活かして欲しいと思います。

大塚 寿 エマメイコーポレーション代表取締役

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おおつか ひさし / Hisashi Otsuka

1962年、群馬県生まれ。株式会社リクルートを経て、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)でMBAを取得。挫折の多かった10代、「もっとやれるはずだ」という想いと現実とのギャップに悶々とした20代を過ごした。なんとか現状を変えようと、リクルートの営業マンという立場から、社内外の大手企業・中小企業の管理職や経営者1万人以上にアドバイスを求めるが、その中でも40代を後悔している人が特に多いことを発見。その轍を踏まないように準備し、40代で自己実現を果たす。歴史上の成功者よりも、身近な市井の人の成功・失敗に学ぶことの合理性を痛感している。

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