いち早く徹底解説、京急「こだわりの新造車両」 回転シートに2つのトイレ"同社初"を4両に満載

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その20次車の車内設備で最も画期的と言えるのが、自動回転式シートの採用だ。ロングシートとクロスシートの両方に切り替えられる座席は、関東私鉄各社で有料座席列車用として導入が進んでいる。京急の20次車の座席は、京王電鉄が「京王ライナー」で使用する「5000系」をイメージするとわかりやすい。各L/C腰掛の下に2口の電源コンセントが付いている。

運転室のすぐ後ろには前方の景色が楽しめる「前面展望席」を設置。2007年の新1000形ステンレス車登場からは設けていなかったため、14年ぶりに復活することになる。

もう1つ大きな特徴が車内のトイレ。京急の車両は4両編成の場合、南の浦賀方が1号車、反対側の品川方が4号車となる。20次車は2号車にバリアフリー対応の洋式トイレ、3号車に男性用のトイレを設置した。男性用トイレは新幹線や在来線特急にはあっても、通勤用車両ではめずらしい。同社でトイレ付きの車両は初めてで、導入にあたって金沢文庫の検車区に汚水の抜き取り設備を新設した。

20次車の製作に携わった同社車両課の課長補佐、宇佐美武人さんは「通勤・通学に加えて三浦半島の観光に力を入れていくためにいろいろなニーズに応えられる車両を作ろうと、3年前から内容を検討した」と明かす。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「抗菌・抗ウイルス」の座席シートの表地や、暖房と換気が同時にできる空調も取り入れた。

外観の細部にもこだわり

外観も特徴的だ。20次車の先頭は一見すると、中央に貫通扉があって連結しての運用も想定した1800番台(15次車)の形状に似ている。一部にはアニメ映画『千と千尋の神隠し』に出てくる「カオナシ」の風貌に例える声もあるようだが、重要なのはそこではない。

中央に貫通扉がある新1000形1800番台(15次車)。20次車の前面の形状は15次車に近い(写真:京急電鉄)

車両課の宇佐美さんは「こだわりの塗装でいままで以上にキレイになっている」と話す。ステンレス車体によく見られる溶接痕をパテで消し、目に触れる機会が少ない連結部分の妻面も含めて車体表面をなめらかに仕上げており、「パッと見たとき『これステンレス車?』という印象になると思う」と胸を張る。外板は繋ぎ目のないシームレスなものとなっている。

最終製作中の20次車=2020年12月(写真:京急電鉄)

新1000形ステンレス車の1800番台(15次車)はフルラッピング、1200番台(17次車)以降は全面塗装と「赤と白」のイメージを重視してきた同社だが、20次車は「京急らしさ」に一層磨きをかけている。総合車両製作所のオールステンレス車両ブランド「sustina(サスティナ)」を採用したのも同社車両で初めてだ。

編成は電動車と付随車が2両ずつの「2M2T」で、東洋電機製造の全閉形主電動機と「ハイブリッドSiC」のVVVFインバータ装置を搭載する。また、ブレーキ力を編成全体で確保する編成ネットワーク制御を用いる。

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