海外発BtoBサービス案内人が語る「成功の法則」 次の焦点はバックオフィスのデジタル化支援

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――あらゆる業務をデジタル化できる、という理解でしょうか。

そうだ。デジタル化のカギは、プロセスの中できちんとデータがとれるということ。紙が混在するなどアナログ的なことが悪というわけではなく、データを可視化できることが大切だ。それは、あらゆる領域で可能だ。

その点では隙間はまだたくさんある。とくにバックオフィス部門はデジタル化できるものがたくさんある。決算書作成支援のブラックラインがわかりやすい典型例だ。

ERP(統合業務システム)の普及によって、会計業務はこれまでもデジタル化されてきた。だが、そこから決算報告書を作成する際、勘定照合や監査などがマニュアルの世界になっていた。そこは効率化されていなかったので、そこにブラックラインが使われるようになっている。

世界市場を見ないと良いサービスにならない

――日本でもクラウドベンチャーのIPOが増えています。海外のほうが有望な会社が多いのでしょうか。

もちろん日本起点の優れた会社もたくさんある。だが、私たちが注目しているのは、世界市場を見ている会社。そうでなければ長期的に続く、良いサービスにはならない。

もう1つ注目しているのは、確実な成功例を持ってくること。そのため、設立から一定時間が経過し、売り上げ規模が100億円くらいになっている会社をターゲットにしている。日本企業にも安心して提供できるようなものを選別して持ってきている。

ただし競争が激しい業界なので、残るサービスは一握り。本当に残る会社を見極めなければならない。

――具体的には、何を見ていますか。

経営陣を非常に注意深く見ている。コロナの関係でアメリカに行けなくなったので、Zoomを使ってCEOや製品責任者らと話をしながら、その会社を深く知るようにしています。場合によってはその会社に投資している投資家にも話を聞くし、カスタマーインタビューなども行う。こうしたリサーチに非常に多くの時間を割いている。

VC(ベンチャーキャピタル)であれば、例えば10社のうち1社が成功すれば十分リターンが出る。だが、(当社は)日本市場参入を支援するスペシャリストとしてパートナーシップを組んでおり、1回でも失敗するとわれわれのレピテーション(評判)に問題が出てしまう。

そのため、すべての会社を絶対に成功させる、ということを念頭に置いている。数よりも質。日本の市場で本当に求められているものを選択する。そういう意味ではちょっと特殊な見方をしているかもしれない。

――コロナ禍の中で、DX加速は多くの企業の課題になっています。

クラウドの活用は、これまでセールスフォースのCRMに代表されるように、営業部門や顧客サポート部門などを対象にすることが多かった。トップライン(売上高)を効率的に伸ばすためにクラウドを活用しましょう、というのが王道だったと思う。

それに対し、バックオフィス側は手付かずだった。実際、コロナ禍でも在宅勤務をやりにくいのが人事や経理、総務などの管理部門。企業経営者には、ぜひバックオフィスのクラウド活用に目を向けてほしい。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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