「飯舘村」が目指している意外な村の在り方 新たな生き方を提示できる村を目指して

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村民とのパイプは強くなったと思っています。手伝いたいという人を僕らはオープンに受け入れているんだけど、中には研究論文狙いもいて、早々に察した村民が「文科省のお金がなくなったら、きっといなくなるよ」とか言ってくる(笑)。でも戦力になるんだからいいじゃん、って。若い人の未熟な発言も、勉強のうちってことでおおらかに迎え入れましょう、みたいな話を村の人としています。

──現在も放射線量の測定を?

はい。帰村を考える人たちの判断材料になるようデータの公表も続けていきます。個人線量計は役場で貸してくれるんだけど、みんな面倒で借りていない。それで僕らが線量計持っていって「110日間つけてくれ」と頼む。それを解析しフィードバックする。山に入る田んぼに出るなどの行動パターンによって、どれくらいの線量になるか目星がつくようになり、自分で行動を管理できるでしょ。それと、将来子供たちが帰村したときのため、ひざの位置に線量計を着け、影響を調べています。

「世界のモデルビレッジ」にする動きも

──田んぼの牧場転用や花や野菜のハウス栽培支援、漆の栽培実験も始めている。産業構造シフトの手助けみたいなことですか?

それがもう今はメインですね。除染後の田んぼで米作はできるんだけど、人手がついていかない。すると課題は産業転換ですから。

『飯館村からの挑戦――自然との共生をめざして』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

若い連中のプロジェクトもいろいろ始まっています。10年後の飯舘村をマップに描いて、それに向けて活動しようって。30~40人がネットワークつくって、今後どうやって新しい人を受け入れるか、空き家対策も含め考えているようです。SDGs(持続可能な開発目標)を全部実現して、世界のモデルビレッジにするって。

移住してもらうためには差別のない村にしないといけないから、男ばかりの地区役員会を男女平等にするとかね。欲しい人材をヘッドハンティングする会社も女性2人が立ち上げました。道の駅の隣に、ワイワイガヤガヤの交流拠点をつくると息巻いています。

僕はやれって言ってる。原発とコロナのダブルパンチを受けた飯舘村こそ、新たな生き方を提示できる地域かもしれない。コミュニティーを回復して、産業をつくりエネルギーも自分たちで賄う。そのためにやれることをやっていこうと。関心を持ってくれる世界中の人々に、これからも発信していきます。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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