新型ISを鍛えた「下山テストコース」本当の神髄 厳しい環境の再現とともに開発の流れも変えた

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Toyota Technical Center Shimoyama 全体図(2019年4月発表資料より、写真:トヨタグローバルニュースルーム)

「そうですね、今回は“IS軍団”として存在できる場があった。それは僕らとしては楽しいことでしたよね。(それぞれの担当の)上司とか、居ないわけですよ(笑)。クルマだけ見て仕事に集中できる環境になれば、皆の気持ちも方向性も一緒になる。これが大事なんですよ。結局、そうすれば進捗も速くなりますからね」

実際のところ、こうした走りに関する部分の開発だけでなく、例えばデザインやボディ設計などのフェーズでも、今回は同じように部署を横断しての開発が行なわれたという。モノを見て、議論して、持ち帰って翌週また……ではなく、関連する部署を横断したメンバーによって、その場でどんどん決めていくというやり方だ。

例えばシャープなキャラクターラインが特徴的なトランクリッド。これを実現するため、開発は設計も生産技術も製造も一堂に会して行なわれた。皆がデザインに惚れ込み「できない」と言うのではなく「どうやればできるか」を皆で考えていく。もちろん、そうなれば誰かに任せておくというかたちにはならず、ここでもすべてが自分事になる。ある意味、皆が重い責任を背負っての開発だ。

次のレクサス車につなげることができた

「『一緒にやればいいじゃん』って常々思っていたんです。そして実際、今回それができた。1台のクルマの開発のやり方としても、ひとつのモデルケースが作れたと思っています。ISを作りながら、ISだけを作っていたわけではなく、次のレクサス車につなげることができたかなと思いますね」

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レクサス車として「Toyota Technical Center Shimoyama」を開発の舞台として活用したクルマは、この新型ISが最初である。今回、あえてフルモデルチェンジではなくプラットフォームやパワートレインを従来型から継承するマイナーチェンジとしながら、入念な作り込みによって実現したエッジの効いたデザイン、そしてシャシーの軽量化や高剛性化、そして下山での走りの磨き上げによって、新たな魅力と確かな実力を獲得した新型レクサスIS。まさにそうしたハードウェアの面でも、開発手法というソフトウェアの面でも、ブランドの次につながる一歩を実現し、そして“レクサスらしさ”の次の一歩を具現化するクルマが生まれたと言ってよさそうである。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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