日経平均は新たな局面に突入しようとしている 「新しい相場」でカギを握っているのは誰か

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ただ、今は日銀も「安い日」しか買わない。2021年に入っては4回しか買っておらず、しかも1回の買い入れ額は、一時の1000億円前後から、最近は501億円に低下している。すでに日銀サイドは「臨機応変」にやることを明言しているので当然のことだが、今後引け値ベースで30年8カ月ぶりの高値だった前出の1月25日の2万8822円を抜けで新しい相場に入ることが濃厚ないま、どのように対応するのか、またそれを市場がどう評価するのか、需給相場の象徴でもある日銀ETF買いの趨勢が、これからの最も重要な注目点となる。

話をアメリカに戻すと、再び「いいとこ取り相場」になっているアメリカでは、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策に注目が集まる。アトランタ連銀のボスティック総裁は2月4日、「今年のアメリカの経済成長率が6%に達しても、FRBが年内の資産購入を縮小する公算は小さい」との見解を示した。日本より回復力が高いアメリカでお金の流れがすぐに変わらないと言うのなら、日本は「なおさら変わらない(変えられない)」と考えるのが順当だろう。

「新しい相場」の主役は個人投資家

さて、今週は11日(木)の建国記念の日の休日を挟んで1200社、週間では1500社以上の決算発表がある。先週はアメリカで重要な景気指標であるISM製造業・非製造業景況感指数や雇用統計等の発表があったが、今週は日米で大きな経済指標は発表されない。また、11日から中国は春節に入る。同国の1月製造業・非製造業PMIは予想に反して若干低く出ていたが、休み前の香港ハンセン指数や上海総合指数は穏健な動きだった。

もし1つに絞るなら、9日発表になる日本の1月マネーストックが一番の注目点だ。昨年3月のコロナショックの後の経済対策によって、同4~6月の3カ月間にM3(現金通貨と預金通貨の合計に定期性預金と譲渡性預金を加えたもの。市中に出回っているお金の量)は63兆8000億円も増えた。

その後も7月は9兆3000億円、8月も7兆7000億円、9月も5兆2000億円、さらに10月1兆9000億円、11月7兆9000億円、12月6兆6000億円と増え続け、連続で史上最高となっている。この莫大な資金供給の流れが1月も続いているか注目。お金の流れが変わらなければ、株価の流れも変わらないというのが今の相場だ。まさに相場の命運を握る数字となる。

1月末の波乱を演出することになった株式取引プラットフォームのロビンフッド・マーケッツは、既存株主から34億ドルの資金を調達し、別枠で銀行団から約10億ドルを借り入れる交渉を進めていると言われている。これは商い急増で清算機関から追加の証拠金差し入れを求められているためで、アメリカの個人投資家の力が急激に高まっていることを示している。これは過熱現象の象徴なのか、個人投資家の力がさらに高まって新しい相場を作る幕開けなのか。いずれにしても、NY株は史上最高値を更新し、「いいとこ取りの相場」が再び動き出している。

日本株においても、本来値動きの乏しいはずの大型株の一角で急騰・急落が頻発している。年初のポジション構築のインデックス買いは1月で終わり、2月は個人投資家好みの個別銘柄選別の展開になっている。おりしも「お金の待機場所」であるMRF(追加型公社債投資信託)の残高は約13兆円に積み上がり、個人投資家の買い余力は大きい。焦らずしっかりマーケットと向き合っていけばよいはずだ。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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