「JR羽田アクセス線」始動、ライバルはどう動く 新線構想はほかにも、既存路線と共存できる?

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既存の空港アクセス鉄道である京急の改良も含め、いずれもJR東日本のプロジェクトと競合する。そもそも、羽田空港アクセスにそれだけの需要はあるのだろうか。

2019年の羽田空港利用者数は、日本空港ビルデング発表の旅客ターミナル利用実績によると国内線が6838万2811人、国際線は1871万5998人で、合わせて8709万8809人だった。だが、コロナ禍によって2020年の国際線利用者は激減し、同年11月の旅客数は前年のわずか2.6%だった。国内線旅客数も大幅に落ち込んでいる。

国内でコロナ感染拡大が本格化し始めた2020年3月の羽田空港国際線ターミナル(撮影:梅谷秀司)

現在の利用者激減はコロナ禍の影響によるものであり、収束すれば利用者数は回復に向かうと思われるが、訪日客の急増が続いていた近年も、京急電鉄と東京モノレール、それとバスで羽田空港へのアクセスはさばけていたのも事実だ。羽田空港の発着便や利用者数が今後も増えるのでなければ、単純に交通手段だけを増やしても意味がないだろう。

「共存共栄」を大切に

また、アクセス交通に求められるのは必ずしも拠点間の大量輸送だけではない。筆者のように東京の郊外エリアに暮らしていると、最寄り駅から空港へ直行し、必ず座れるリムジンバスのほうが便利といえる。2015年3月には首都高速道路の中央環状線が全通して車による空港アクセスが改善され、たとえば新宿―羽田空港間はバスで約25分に短縮された。

JR東日本の羽田空港アクセス線の鉄道事業認可により、羽田空港への鉄道アクセスは増えることになる。しかし、コロナ禍で現在ある空港アクセスの交通機関は大きな影響を受けており、航空需要の先行きがどうなるかも見通しが立たない。需要が旺盛であれば競争による発展も見込めるものの、今後は既存の交通機関もあわせて維持・発展を確保できるようにしなければ共存共栄が図れずに列車の本数減やバスの減便などを招き、かえって不便になる恐れもあるだろう。

JRの羽田空港アクセス線以外の空港アクセス路線プロジェクトがどのように進展するかはわからない。だが、今後は単に新たな路線を整備するよりも、鉄道やバスなどそれぞれの交通機関の特性を生かし、全体的な空港アクセスの利便性を向上させる方策が重要になるのではないだろうか。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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