民主主義がアフリカ経済を殺す 最底辺の10億人の国で起きている真実 ポール・コリアー著/甘糟智子訳 ~よりよい国民国家形成なき貧困脱出は可能か
アフリカでは珍しく規律ある大統領の、大統領になる動機が強固な軍隊を作ることだという記述に、富国強兵にいそしんだ先達を思い出しもする。信頼されない政府はむしろ課税水準を高めないという記述には、現在の日本のことかとも思った。
ただし、植民地からの独立運動は国民的アイデンティティを生む機会だと思うが、それについての記述がない。多様すぎる国家の選挙は比例代表制の議院内閣制にすべきという政治学者の議論もあるが、それについても触れられていない。いくつか疑問もあったが、細心な分析から大胆な提案を導いていく記述には感銘を受ける。
アフリカ経済のみならず、よりよい国家の形成に関心を持つ方には必読だ。
Paul Collier
オックスフォード大学教授・同大学アフリカ経済研究センター所長。開発経済学の世界的権威。研究テーマは、低所得国のガバナンス全般、デモクラシーの政治経済学、内戦の経済学、グローバリゼーションと貧困等。前著に『最底辺の10億人』。
日経BP社 2310円 318ページ
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら