有休取得をためらう人は労働法をわかってない 働く人の当然の権利であり不当な扱いは違法だ

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会社が時季を指定するという点についてはルールがあります。以下に注意してください。

1)すでに5日以上の有給休暇を取得している人に、会社が時季を指定して有給休暇を取得させることはできません。

2)これまでに取得した有給休暇が5日未満の人に、会社は働く人の希望を聴いて取得時季を指定します。

3)これまでに取得した有給休暇が5日未満の人が申請した日について、通常業務を妨げるなどよほどの理由がない限り変更することはできません。

罰金が科されることも

年5日の有給休暇を取得させなかった場合には、従業員1人あたり30万円以下の罰金が科されることがありえます。

◎弁護士からひと言

労働時間や賃金、職場環境など、働く人にとって不利益な労働条件にならないように会社と交渉し改善を目指す組織が労働組合です。会社の中で、働く人たちによって組織されているケースがほとんどですが、トラブルが発生した時にうまく機能しないという場合もあるようです。

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会社に対して交渉を求めるには、それなりの準備が必要です。会社側が資料を呈示し、その要求に応じられないことを説明したのに対して、組合が何ら合理的な反対根拠を示すことなく団交を求める場合には、会社側として労働者側に妥結の誠意がないものとして団交を拒否することも許されていますので(順天堂病院事件・東京高裁判決 昭43・10・30)、組合としても真摯な準備と対応が求められます。

もし、労働組合がないのなら、自分が仲間を募って組合を組織する、労働組合があっても実際には機能していないのなら、自分が執行委員になって組織を変えていく、ということも考えてみましょう。そのためにも、働く人を守るためにどのような法律があるのかを知っておくことをおすすめします。

岩出 誠 弁護士

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いわで まこと / Makoto Iwade

1951年千葉県生まれ。都立日比谷高校、千葉大学人文学部法経学科(法律専攻)卒業。東京大学大学院法学政治学研究科(労働法専攻)修了。ロア・ユナイテッド法律事務所代表パートナー。東京弁護士会所属。明治学院大学客員教授、東京都立大学法科大学院非常勤講師。労働法の分野を得意とし、数多くの事例に関わりつつ企業の人事制度の改善などのアドバイスを行っている。『労働法実務大系』第2版(民事法研究会)、『働く人のための法律相談』(青林書院)など著書多数。

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